WEB小説-石川ユーリオ

石川ユーリオのオンライン小説

私生活が宇宙人どもに覗かれてますよ:第2話 地球ヒストリー誕生秘話

 国民的人気ドラマの地球ちきゅうヒストリーのとはなんなのか。まずは地球ヒストリー誕生秘話を語らなければならないだろう。

 

 よく動物のドキュメンタリー番組で肉食動物のチーターの母親が子育てのため草食動物を追いかける。けれどもチーターの母親は狩りに慣れていないのでうまく草食動物を捕まえることができない。

 

 肉食動物の母親が草食動物を追いかける。

 草食動物に逃げられる。

 肉食動物の母親立ち尽くす。

 狩り失敗。

 負の4コンボができあがる。

 

 一連の様子を撮影し、まるで新米チーターの母親子育て奮戦記のように解説つきのドキュメンタリーに仕上げる。それは動物のドキュメンタリー番組として放送される。大自然の中でひたむきに生きているチーターの母親と子供たちの姿は、観ている者たちに感動を提供することになるだろう。

 

 だが、しかし、肉食動物のチーターの母親は、撮影されていることなんて知らない。知る由もないのだ。

 

 ただ、今日という一日を活きることだけを考えている。

 我が子を立派に育てることだけを考えている。

 野性動物の日常なんて非常で過酷なもの。

 活きるか死ぬかの二択しかない。

 

 これはここだけの話なので誰にも言わないでほしい。宇宙には宇宙人がいる!

 本当に宇宙人はいるのだ。ただ、高度な文明が発達した宇宙人たちは自分たちの存在を知られるのを恐れ、宇宙人たちよりも下等と思われる惑星に未確認飛行物体を飛ばし、宇宙人はいないと思わせる成分を配合した霧状の液体を野菜や植物とかにばらまいていた。

 ※よくUFOを見かえたと言う人間がいるが、それはUFOが霧状の液体をばらまいていた時、偶然見かけたのだろう。 

 

 下等生物たちは知らずに野菜を食べ、宇宙人なんていないと思うようになった。それは宇宙人にとって、まことに都合のいい展開だったのだ。高度な文明のとある宇宙の惑星では、宇宙人からしたら地球は下等生物の住む惑星であった。

 

 とある宇宙の惑星のテレビ局は、顕微鏡でないと分からないほどのミクロ粒子型のカメラを使い、地球人たちに気づかれないように盗撮し続けた。盗撮したものを編集し、地球人たちの生活と題してドキュメンタリー番組として放送。

 

 地球人たちの生活のドキュメンタリー番組がとんでもない視聴率を叩きだした。日本のドラマで例えるならば、1983年に放送された「おしん」の視聴率62.9%みたいなものだ。

 

 こぞって宇宙人どもは地球人たちを勝手に盗撮し、地球人たちの生活をドキュメンタリー番組化していくことになる。何でもそうだが、一大センセーショナルを起こしたものは、どんどん過激になっていく。視聴率をとるためならば何でもありの精神は宇宙人にもあるようで、前代未聞のとんでもない企画を持ちこんだ監督がいた。彼はのちの国民的人気ドラマ地球ヒストリーの監督になる人物であった。

 

---

 

 4年前 宇宙のとあるテレビ局にて

 

--- 地球ヒストリーの監督視点 ---

 

 何の技術も考えもなしに地球を盗撮し、適当に編集して放送すれば簡単に視聴率がとれる時代は長くは続かないだろう。ブームはいつかは終わる。終わった後に慌ててもだめなんだ。次の手を考えることのできる奴が、次の視聴率王への切符を手に入れることができる。

 

 俺はドラマ監督になりたくてテレビ局に入社した。けれども無能な上司たちのせいで、仕事と言えば、地球盗撮の模様を上司にああしろ、こうしろと言われるまま編集してきた。俺だったら、こうするのにと思って意見を上司に言ったこともあったが、若造が生意気なこと言うなと却下された。

 

 俺は自画自賛でもいい。前代未聞の企画書を作成し、今、テレビ局の社長に直訴しようとしている。熱い想いは誰にも止められない。俺はテレビ局社長のドアをノックした。

 

--- 地球ヒストリーの監督視点 完 ---

 

トントントン。

 

「誰だ? 入りたまえ」

「失礼します」

 右手に企画書を持ったアルトンはドアを開いた。目の前には逆光も手伝って威圧感漂うテレビ局の社長がいる。テレビ局の下っ端であるアルトンは内心、足が震えそうになるのを我慢し、社長の前に深くお辞儀をした。

 

「たしか君はわが社で働くアルトン君だね?」

「社長、名前をおぼえてくださり光栄でございます」

「して、何の用なのかね?」

「単調直入に言わせてください。次世代を担う人気番組になるドラマの企画を持って参りました」

「ほほう、そんな企画があるとは! で、その企画は誰が作ったのかな?」

「私でございます」

「あはははは。冗談だろう、おい」

 なんて、テレビ局社長はバカでかい声で笑う。それはもう何言ってんだこいつと言わんばかしの笑い方だった。アルトンは社長の笑い声に飲まれそうになり、足ががくがく震えだしそうになるのを耐える。

 

「社長! 冗談かどうかは企画書を読んでから言ってもらえませんか?」

「ほほう、アルトン君、言うねぇ。じゃあ、読んでつまらない企画書だったらアルトン君にはテレビ局辞めてもらうけど、その覚悟はあるのかな?」

 社長の目は逆光も手伝ってか、キラリと一瞬光った。アルトンは企画を握りしめ、社長に向って企画書を突き出した。

 

「覚悟を持って、社長に企画を渡しにきました。これが私の一世一代の大勝負でございます」

「分かった。企画書を拝見しよう」

 そう言うと、車掌はアルトンの企画書を読み始めた。無言の空気が漂う中、アルトンは生きた心地がしなかった。社長はテレビ局のトップであり、視聴率のとれない番組は容赦なく打ち切り。低視聴率をとった関係者は集団左遷させるほど非常な一面を持ち合わせている。

 

 だからこそテレビ局の社長の座までのぼりつめた叩き上げの人物である。そしてまた、下等生物たちの住む惑星である地球ブームの火付け役の第一人者であり、地球ブームが下火になりつつあることをいち早く感じ取っていた。

 

--- テレビ局の社長視点 ---

 

 わしのところには出世願望のあるテレビマンたちがよくやってきて近づいてくる。奴らはわしに気に入られようとおべんちゃらや接待をしてくるが、わしを恐れているのか企画を持ってこようともしない。地球ブームになったら、バカみたいに地球の映像を垂れ流せばいいと思っている低能な奴らばかりじゃった。

 

 しかし、このアルトンの企画書にはたまげた。ヒットの王様と言われたわしにも思いつかない発想を企画につめこんできやがった。この企画はちょっとしたら大化けする。下手をすれば宇宙テレビ局史上、最大のヒットを飛ばすかもしれん。

 

 こんあ逸材がわが社の末端で働いていたとはのう。こりゃ、面白いことになるぞ。

 

--- テレビ局の社長視点 完 ---

 

 テレビ局社長はうなった。

「この企画書はやばいぐらい面白い。ただちにアルトン君が責任を持ってやりなさい。で、この企画のドラマは誰が監督するのかね?」

「私が監督します」

「ほほう、君が監督するというのかね?」

「はい、元々、私はドラマがやりたくてテレビ局に入社しました。私の頭の中には様々なアイディアがつまっています。それを形にできるのは私だけです」

「ほほう、頼もしいことを言ってくれるね」

 社長はそう言うと、アルトンの肩を力強く叩いた。そして、

「死ぬ気でがんばれ」

 と激励したのであった。人は誰しも勝負する時がある。現在、有名である人も若手の時は不遇に耐え、チャンスをものにするために動かねばいけない時もある。

 

 アルトンは首覚悟で社長に直訴することでチャンスをもぎとったのである。これはのちにアルトンの自伝で「地球ヒストリー誕生秘話」の章で語られることになる。若者たちはアルトンの自伝に熱狂し、売れに売れまくったことは言うまでもない宇宙記録である。