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伝説の勇者なりきり部の奴ら:第11話 小悪魔アイドル転校生

 担任山田は咳払いをした後にさ。

「皆さん、新しい転校生がやってきました。それでは姫野君、自己紹介してください」

 と言ったんだよ。

「はじめまして、姫野愛ひめのあいと言います。これからみなさん、仲良くしてくださいね」

 姫野愛ひめのあいはにこりと微笑んだんだよ。

 

 それは小悪魔的な笑顔でね。どこか魔性の女を思わせるような感じだったんだよ。ひかるちゃんとはまた違うタイプの美女アイドルの登場にさ。男子どもがね。

 

姫野愛ひめのあいさんと仲良くした~い!」

 と口々に叫びだしたんだよ。もうね、ここはアイドルのコンサート会場かと思うほどのさ。絶叫もりあがりだったんだよ。アイドル研究部の前田君なんてね。自前のペンライトを手に持ってさ。左右にふりはじめる始末だったからね。前田君、普段からペンライトを持ち歩くなんてびっくりだわ!

 

 一方、女子たちはというとさ。やや嫉妬を含む姫野愛ひめのあいへの微妙な視線が向けられていたんだよ。そんな中、ひかるちゃんはね。お昼のハンバーグに満足したのか、うとうとお昼寝中なんだよ。

 

 ひかるちゃん! 今は寝ちゃだめだよ。寝ている姿はかなり目立つからさ。けれども誰一人ひかるちゃんがおねむ中なのを気づかないほどにね。ここにいる生徒たちは姫野愛ひめのあいに釘付けになったんだよ。俺だけは気づいていたけどな。ひかるちゃんの隣の席だし。ぼそっ。

 

 俺はひかるちゃんの手前もあってさ。たしかに姫野愛ひめのあいが美人なのは認めるけどね。男子どもに混じってさ。

姫野愛ひめのあいさんと仲良くした~い!」

 などとは口が裂けても言わないし、言えないんだよ。

 

 けれども姫野愛ひめのあいの首から下の部分をね。スキャンするように鑑賞だけはしていたんだ。ふむふむ、ひかるちゃんと比べるとたわわではないけどな。まぁまぁ整っている感じの膨らみだなぁと偉そうに品評してたんだよ。俺は水着審査ありの美少女コンテストの審査員気取りか。

 

 姫野愛ひめのあいの射るような視線がさ。俺に突き刺さってね。どうも俺を見ているっぽいんだよ。まるで俺の思考が全部読まれているような妙な胸騒ぎを感じたんだ。ね? ね? たぶん気のせいだよね。

 

 俺は助けを求めるようにひかるちゃんを見たんだけどさ。ひかるちゃんは絶賛おねむ中なんだよ。もうね、気持ちよさそうにすやすや眠ってるんだよ。おい、誰かひかるちゃんのお昼寝に気づけや! 担任山田は周りの生徒たちの過熱ぶりにはお構いなしにね。

「神宮寺の後ろの席が空いているからとりあえずそこに座りなさい」

 と指示したんだよ。俺の後ろの席の生徒は入院中でさ。しばらく学校にこないらしくてね。偶然にもその席しか空いてなかったんだよ。

 

 男子どもがさ、いっせいに恨めしそうに俺を見るんだよ。中には俺に殺意を向ける視線も含まれているようなね。ちょっと怖いんだけど、帰り道気をつけなければ。俺は居たたまれなくなってさ。頭をぽりぽりとかいてみたりね。猿が毛づくろいをするような動きをしてみたりしてさ。何事もなかったように平静を装っていたんだよ。内心は、びびりまくってたけど。

 

 そんな俺の心情はぶった切るようにね。姫野愛ひめのあいはどこかのファッションショーにさ。お忍びで出演していますといわんばかりに俺の方へ歩きだしたんだよ。まぁ担任山田から俺の後ろの席に座りなさいと言われたからだけどね。俺へ向けられた男子どもの視線はさ。すぐに姫野愛ひめのあいへ向けられ一安心したんだよ。

 

 もうね、まるでモデルのような姫野愛ひめのあいの歩き方。そりゃ誰だって姫野愛ひめのあいを見るよ。釘付けにだってなるよ。つーか前田君、何で一眼レフカメラなんて持ってるの?

 

 前田君は一眼レフカメラをさ。連射モードでパシャパシャ撮っているんだよ。姫野愛ひめのあいは絶賛撮影されてんだよ。一眼レフを覗きこむ前田君の目つきはね。獲物をとらえるハンターみたいだったわ。前田君、将来、車を運転する時、人格変わっちゃだめだよ~。

 

 しかも担任山田はさ。前田君の一眼レフ連射に何も言わない。見て見ぬ振りなんだよ。明らかにだんまりを決め込んでいるんだよ。おそらく現像した姫野愛ひめのあいの生写真をあげるとかの密約をね。担任山田としたのだろうよ。アイドル研究部、前田君! 恐るべしだよ。あんたやり手の政治家になれるわ。

 

 姫野愛ひめのあいは俺の後ろの席にさ。さっそうと歩いてきたんだよ。俺の横を通り過ぎる間際、妙に不適な笑みを向けたんだ。

「あなたが神宮寺ね。あとで誰もいない屋上で2人きりで話があるからよろしくね」

 突然の姫野愛ひめのあいの言動にね。俺は驚いたんだよ。

 

 もうね、クラス中の誰もが(おねむ中のひかるちゃんを除いて)さ。この姫野愛ひめのあいの言動に驚いてね。またもや例の如くあの女子がさ。

「突然の愛の告白? 何てドラマチックな展開なの?」

 と叫びだしたんだよ。

 

 もうね、前田君なんてあまりのショックに一眼レフカメラ落としちゃったよ。おそらく何十万とするカメラのレンズがパリーンって割れちゃったよ。前田君、寂しそうな瞳で俺を見ないで~。そして男子どもはと言うとね。

「何でよりによってお前神宮寺なんだよ。お前にはひかるちゃんという幼な妻がいるだろう」

 と怒りだすしさ。もうね、これから暴動が起きるんじゃないかと思うほど怖い視線が俺を取り囲んだんだよ。

 

 俺もひかるちゃんの手前があるからさ。それに後々面倒なことになるのはごめんだしね。今後のクラスでの俺の立ち位置を考慮した結果、

「いや、俺は行かないし、別に話すことはない!」

 と言ってやる。あぁ言ってやったよ。何様なんだ俺は! このクラス一のモテ男代表気取りか。男子どもはよくぞ言ったと好意的に評価してくれたんだけどさ。例の如くあの女子に至ってはね。

 

「ドロドロの三角関係を若い時に経験しておいた方がいいのにね」

 ぽつりとつぶやきやがったんだよ。それはお前の希望的観測たのしみたいだけだろが! そこの女子よ、君は恋愛の何を知っているというんだ? どんな展開を期待していたんだよ。いい加減にさ、フィクションの恋愛ものと現実をごっちゃにするのやめれ~、やめれ~。もう、やめてくださいよ。

 

 俺の堂々たる断りを目の前にしてさ。いくらアイドル級に可愛くてね。モデルのような姫野愛ひめのあいも少しは動揺したことだろうよ。可愛ければ何でも思い通りにいくとは限らないことをさ。この俺様が身をもって教えてやんよ。俺は何故かモテ男のように優越感に浸りながらね。ちらりと姫野愛ひめのあいを見たんだよ。

 

 すると姫野愛ひめのあいは動揺する気配すらなくてさ。むしろ不適に笑い、むしろ自分に不可能はないのだといわんばかりに俺に顔を近づけてきたんだよ。何、この積極的な姫野愛ひめのあいの求愛行動。これが噂の肉食系女子の生態ですか、そうですか。こうやって草食系男子は肉食系女子に捕獲ゲットされちゃうのね。俺は唇を奪われると覚悟したんだ。

 

 ひかるちゃんとキスさえしたことないのにさ。ファーストキスは突然現れた美少女転校生って……。もしかして俺にモテキが到来したのか。何だろうこの感じ。何でこんな時に限ってカブト虫が交尾している映像が浮かんでくるの? 俺って変態? 邪念よ、消え去れなどと思っているとね。

 

 姫野愛ひめのあいは何気ににやけている俺の耳元でさ。クラスのみんなには聞こえない声音でささやいたんだよ。

「あんたの唇なんて奪わないわよ。バカじゃない。このカブト虫野郎、マジキモイ。あのねぇ、私の言うこと聞いた方がいいと思うけど。さもないと未だにおねしょしていることばらすから」

 

 

 

 何故、俺がおねしょすることを知っているんだ! オーマイガー!

 

 俺のにやけた顔は一瞬でね。お地蔵さんのように無表情となり青ざめてしまったんだよ。別に悟りを開いたわけでもないし、お供えものが欲しいわけじゃないんだからねッ!

 

 男版ツンデレってみたけどさ。姫野愛ひめのあいは不適な笑みを浮かべたままなんだよ。もうね、それはまるで敗者と勝利者の誕生の瞬間だったんだ。俺のおねしょがクラスに知れたら一大事だよ。クラスのみんなから笑われてね。格好のいじり対象となるだろう。

 

 もうね、マモル~! ちゃんとパンパースおむつして学校きてるかーい。授業中、おねしょしちゃだめだよ~。ひかるちゃんにおしめ取り替えてもらった方がいいんじゃない。キャハハハハハ。ウハハハハハ。マジ、マモル受けるんだけど(笑)

 

 そんな悲劇がさ、やばいぐらいの地獄絵図がね。俺の頭上に浮かびあがったんだよ。俺の学校生活は暗黒の黒歴史と化してしまうだろうよ。姫野愛ひめのあいの手によって、崩壊の序曲へ王手をかけられてしまった。それは非常にまずい。何としても回避せねばいけない。俺は死んだ魚のような目つきでさ。

「わかった、行くよ」

 と妥協することにしたんだ。もうね、俺の心は簡単に折れてね。それは自分を守るため。それは地球を守るため(それはないな)。もう崩壊寸前だよ。

 

「じゃああとでね」

 それが当たり前といわんばかしにさ。ニコリと微笑む姫野愛ひめのあいはね。まるで外行きの服を着ているような不自然な感じに俺には見えたんだ。例えが分かりづらいので簡潔に言うとね。姫野愛ひめのあいの笑顔は、さっきから作り物の微笑みにしか見えないんだよ。

 

 周りの男子どもにはアイドル級の笑顔に見えたかもしれない。この笑顔のためならばさ。何でもやってやるよと意気ごめるかもしれない。一般的にアイドルの握手会に参加したファンの感動は相当なものだろうよ。一生、この手は洗わない! と感激し公言するファンだっているのだから……。

 

 けれども握手会終了後、アイドルは石鹸で手を念入りにごしごし洗ってね。しまいにはアルコールジェルで手を完全消毒するような姫野愛アイドルに見えるんだよ。俺は絶対に姫野愛ひめのあいにはだまされない。

 

 この小悪魔め。

 プラダを着た悪魔め。

 あっ熊悪魔め(最後ダジャレ風)。

 

 俺と姫野愛ひめのあいのやり取りを見ていたあの女子はさ。

「あぁ、ドロドロの三角関係に突入ね。ひかるちゃん可愛そう、悲劇のはじまりだわ」

 なんて、言うけどね。お前の目は笑っているので偽善者確定やじうまかくていだよ。この展開、野次馬としては最高の料理に見えることだろうよ。

 

 男子どもに至ってはさ。

「マモルのモテキ信じらんねー」

 と羨ましがる始末だしね。どうにもこうにも、みんな誤解しているじゃねぇの。みんな姫野愛ひめのあいに騙されるな。言っとくけどな。話しかけたらさ、返事がない。ただのしかばねのようだ……と返ってきたようなもんなんだぜ。俺は姫野愛ひめのあいに脅迫されたんだ!

 

 しつこくもう一度言う。俺は姫野愛ひめのあいに脅迫されたんだ!

 

 さらにしつこくもう一度言う。俺は姫野愛ひめのあいに脅迫されたんだ!

 

 別に笑いを意識して天丼しているわけではないんだからねッ!

 

 何せ俺自身、笑えない状況にいるのだから。姫野愛ひめのあいは絶対あぶない女に違いない。転校初日に俺の秘密を知っているなんてありえないだろ。

 

 でも姫野愛ひめのあいの声音、どこかで聞いたことがあるんだよなぁ。

 

 そうだ!

 

第12話 レッドカードを読む