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伝説の勇者なりきり部の奴ら:第12話 レッドカード

 朝、俺がおねしょして起きた時にね。

「へぇー、高校生で未だにおねしょするってやばくな~い」

 あの声音だよ。あれは姫野愛ひめのあいの声だったんだ! あ~住居不法侵入で姫野愛ひめのあいを告訴してぇ。

 

 今すぐ姫野愛ひめのあいとバイバイしてさ。

「次は法廷で会おう!」

 と言ってやりてぇ~。とか何とか思っているとね。

「もうハンバーグ食べられない。むにゃむにゃ……」

 ひかるちゃんは気持ちよさげに寝言を言ってきたんだよ。

 

 もうね、ひかるちゃん、夢の中でもまだ食べてるのか。どんだけ食べ続ければ気がすむのよ。生まれもってのフードファイターか。まだまだ日本は平和なんだなって思ったよ。まぁ、ひかるちゃんに姫野愛ひめのあいとのやり取りを聞かれなかっただけましなのかもしれないけどさ。それにしてもひかるちゃんの寝顔可愛いな。

 

 俺はうっとりとひかるちゃんの寝顔に引き込まれそうになっているとね。肩を叩かれたんだよ。振り向くと姫野愛ひめのあいは耳元でこう囁いたんだ。

 

「寝顔可愛いなと思ってたでしょ?」

「えーーーーーー!」

 俺は思わず悲鳴に近い声をだしてしまったんだよ。何故に俺の心の声をお見通しなんですか。あなたは何者なんですか。あぁぁぁ、あぅあぅぁぁぁ。頭の中がパニック状態になってしまってさ。

 

「神宮寺! いきなりでかい声をだすな!」

 担任山田の容赦ないイエローカードがあがってね。

「すいませ~ん」

 即謝る俺。

 

 担任山田はプロレス同好会顧問だからね。怒らせると怖いんだよ。ひかるちゃんなんてさ。俺の絶叫で目を覚ましたみたいでね。

「私のハンバーグどっかいっちゃった」

 と頬を膨らませて残念がっているんだよ。つくづくひかるちゃんにとって、この世界きょうしつは平和なんだなって思ったよ。

 

 一方、俺の平和は姫野愛フリーガンの登場でさ。もろくも破壊されたんだよ。

乱暴者フリーガン呼ばわりとは失礼にもほどがある」

 姫野愛ひめのあいはグーパンチで俺のおでこをどついてきたんだ。

 

 バチン。

「いたッ」

 このどつく行為こそが乱暴者だと物語ってるじゃねぇかよ。しかも手加減なしでぶったたかれてマジおでこ痛いんですけど。姫野愛ひめのあい、絶対危ない女だよ。

 

 けれども俺の気のせいではなくてね。俺の心の声を姫野愛ひめのあいは読むことのできることを確信したんだ。

 ぶったね、親にも殴られたことないのに! と俺が心の中で思うとさ。

「だからお前は安室奈美恵アムロ・レイか」

 と突っ込まれてね。姫野愛ひめのあいの平手パンチ炸裂。

 だから俺の心の声を読むな読むな。しかも安室奈美恵ってなんだよ。アムロ繋がりしかあってねーじゃねーかよ。

 

 厳密には、2度もぶった! 親父にもぶたれたことないのに! だろ。

「じゃあ、言葉通り、もう1回ぶってあげる」

 姫野愛ひめのあいのビンタ炸裂。

 

 何これ? 罰ゲーム? 今日から俺、いじめられっ子なの。姫野愛ひめのあいに上納金渡さないといけないの。俺は正直、唖然としたんだよ。何せ、第3者からは姫野愛ひめのあいがぶつぶつひとりごちながら俺をぶったたいているようにしか見えないのだから……。俺の心の中の声は姫野愛ひめのあい以外には聞こえないのだから。

 

 クラスは俺と姫野愛ひめのあいのやり取りを固唾かたずをのんで見守っているんだけどね。ひかるちゃんだけはさ。

「ハンバーグ。ハンバーグ。わたしのハンバークはどこいった?」

 と寝言をつぶやいているんだよ。しかも、またもやおねむとなりはじめたんだよ。

 

 もうね、どんだけ寝るんだよ、ひかるちゃん。あなたは寝太郎なの。それとも眠り姫? だったら俺がチューしてひかるちゃんを目覚めさせたいんだけど。でへへ。

「人類史上まれに見ること思うわね!」

 冷めた目で姫野愛ひめのあいがぽつりと言い放ってきやがった。

 

「何も思ってねぇよ(心の中ではひかるちゃんにチューしたいとか思ったけど)」

 と俺も応戦したんだけどね。

「じゃあ存在自体が人類史上まれに見る加減ね」

 不適な笑みを浮かべたまま姫野愛ひめのあいは言い放つんだよ。

 

 はいはい、俺の存在自体が生類憐れみの令ですか、そうですか。もうね、あぁ姫野愛こいつは負けず嫌いだなと俺は思ったよ。これ以上、姫野愛ひめのあいと関わるとさ。ろくなことがないだろうと俺の危険シグナルが鳴り響いたんだけどね。

 

 まぁ、ひかるちゃんが夢の中の住人になるのはよしとしてさ。徐々に姫野愛ひめのあいってアイドル級に可愛いけれど、実はちょっとやばくね? みたいな空気が流れだしてね。それに伴い日本人特有の見て見ぬ振りをクラスはしはじめたんだよ――

 

 って、担任山田も見て見ぬ振りかよ!

 

 そこはさぁ、もうそれぐらいにしておけよとか止めるところでしょ。お前はそれでも教師か。つーかプロレス同好会顧問だろ。己の力プロレスわざを使ってでも何とかしろよ。頼むよ担任山田。

 

 俺は救いを求めて担任山田を見たんだけどね。あの野郎山田はすぐに目をそらしやがったよ。しかも担任山田の目は姫野愛ひめのあいに怯えているようにも受け取れたんだ。

 

 武道に通じる者は相手を見ただけで戦闘能力が分かると聞いたことがあるけどさ。まさかね、姫野愛ひめのあいがまさかね。戦闘のプロフェッショナルなわけないよね。

「さて、さて授業~、授業始めるぞ~」

 担任山田は何事もなかったかのように授業を開始しはじめたんだよ。それに伴い、クラスのみんなも静かになっていったんだ。ひかるちゃんだけは絶賛、おねむ中だけどな。

 

 俺の記念すべき17歳の誕生日に諸悪の根元やばいモンスターである姫野愛ひめのあいが現れた。

 

 どうする?

 

 たたかう

 

 まほう

 

 ぼうぎょ

 

 にげる

 

 俺的には「」を大金をはたいてでも選択したい。財布の中身小銭しかないけどな。てへッ!

「逃げられると思わないでね、貧乏学生じんぐうじ

 姫野愛ひめのあいはまるで俺の心の中なんかお見通しなんだからと言わんばかりに俺の耳元に囁いたんだ。

 

「へぇー、高校生で未だにおねしょするってやばくな~い」

「やっぱりお前か!」

 俺は声を荒げて立ち上がってしまったよ。

 

 朝、おねしょした時にどこからともなく聞こえた声はさ。間違いなく姫野愛ひめのあいだと確信したんだ。もうね、不法侵入で告訴してやるよ。犯罪者の非道な行為を許してはならない。

「神宮寺! 授業中にうるさい。廊下に立ってろ!」

「はい、すいましぇ~ん。反省しま~す」

 担任山田からついにレッドカードがだされてね。俺は廊下へ向かっていくことになったんだ。

 

 廊下に立たされることにより、一時的にも姫野愛ひめのあいから逃れることができたんだけどさ。いぇ~い。ラッキー! 教室をでた俺はね。本当にお地蔵さんのように立ち尽くすはめになってしまったんだよ。まぁ、それはそれでよしとしておこう。

 

 俺の記念すべき17歳はどうなるのだろうか。

 

 誰か助けて!

 

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