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伝説の勇者なりきり部の奴ら:第15話 神様なんていない

 父親のぼるからさ。

「今、忙しいから遊ぶことはできない」

 なんて、断られてね。いつものようにひとり寂しくさ。俺は公園にたたずんでいたんだよ。

 

 砂場で山を作ってはね。「むきー」なんて叫びながら思いっきり足で山を壊してた。たぶん満たされないはけ口を砂山にあたっていたんだと思うよ。そんな時に、ひかるちゃんの家族たちが車で通りかかったんだ。

「マーく~ん。そこでなにしているの?」

 なんて、ひかるちゃんが車の窓を開けて叫んできてさ。俺はまた父親のぼるに構ってもらえなくてね。すねていたのもあってさ。

「べつに……」

 と暗い口調で答えたんだよ。するとひかるちゃんはね。

 

「これからひかるたちピクニックに行くんだけど、マーくんもいっしょにどうかな? いっしょに行くと楽しいよ?」

 なんて、優しく微笑みながら誘ってくれたんだよ。ひかるちゃんが両親にさ。

「マーくんもピクニックにつれてっていいでしょ?」

 なんて、説得してくれてたんだけどね。俺はすねていたのもあってさ。

 

「いや、おれはいいよ。おれなんかがいっしょにいったら迷惑だから……」

 なんて、言って断ったんだよ。そしたら車から降りたひかるちゃんが俺に近づいてきてね。そっと俺の肩に触れたんだ。



 そして――



「わたし、マーくんのおとうさんのかわりになるって約束したから、ね? だからいっしょに行こうよ?」

 なんて、ひかるちゃんはつぶやいたんだよ。もうね、体育座りになっていた俺はさ。ひかるちゃんを見上げるとね。太陽の光に照らされたひかるちゃんの笑顔がまぶしくて泣きそうになった。

 

 結局俺もピクニックに行くことになったんだけどさ。俺とひかるちゃんは車の後部座席に乗っていたんだよ。心は晴れなくて暗いままだったけどね。ひかるちゃんは俺を元気づけようと必死になってしゃべってくれたんだ。舌足らずなひかるちゃんがさ。あまりにも必死になってしゃべるものだからね。言葉はかみかみでとても流暢とはいえないものだったんだよ。

 

 けれどもひかるちゃんの想いだけは伝わってさ。気づいたら俺もあーでもない、こうでもないとしゃべりはじめていたんだよ。しだいに楽しくなって無邪気にひかるちゃんといっしょになって笑ってたんだ。それはもう、幸せな瞬間だったんだよ。

 

 車がカーブにさしかかった時ね。ふと俺は妙な胸騒ぎがして正面を見るとさ。そこに居眠り運転していたトラックが俺たちの乗ってる車に突っ込んできたんだよ。ひかるちゃんのお父さんとお母さんがね。

「「うわぁ~」」

 と叫んでね。気がつくとトラックと俺たちの乗った車は転倒したんだ。

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ。

 

ガシャーン!

 

 何か凄い音が聞こえたぐらいで、その後のことはおぼえていない。結局、俺とひかるちゃんは奇跡的に助かったんだけどさ。でも、残念なことにひかるちゃんのお父さんとお母さんは亡くなってしまったんだよ。



 俺はあの瞬間になんていない。



 そう思ったね。

 

 そう思ったんだ……。

 

「だから、神様なんてものはこの世に存在しないんだよ!」

 

 あの頃を思いだしたのも手伝ってさ。絶叫に近い感じで俺は言ったんだよ。姫野愛ひめのあいは言葉を失ったようにね。何かを考えているかのように押し黙っていたよ。俺は感情の高ぶりに気づくと目に涙をためていたんだ。姫野愛ひめのあいは何も言わない。



 何も――



「おい、姫野愛ひめのあい! 何とか言うことはないのかよ!」

 俺から口を開くも姫野愛ひめのあいは応答もなく神妙な顔をしたままだったんだ。まるでろう人形のようにさ。世界が静止したように微動だにしないんだよ。そして、ただ無情にも時間だけが流れたんだ。俺は白けた感じて姫野愛を見守っているとね。

「神宮寺、おまたせ~」

 姫野愛ひめのあいがやっと口を開いたんだよ。

 

「何がおまたせだよ」

 呆れ美味に俺は言うとさ。

「ごめんごめん、ちょっとテレパシーで友好的な死神と会話してたから」

 なんて姫野愛ひめのあいは言ってくるんだよ。

「また意味不明なこと言いやがって!」

 俺は冷たい目線を姫野愛ひめのあいに浴びせたんだけどね。

 

「そんなこと言わずに、まぁ私の話聞いてよ。神宮寺は神様なんていないといったけどさ。神様はいるの」

「は? だから俺はいないと……」

「いいから、最後まで聞きなさい。横やりは禁止。じゃないと鉄拳制裁ね」

 そう言うと姫野愛ひめのあいは俺のおでこをぱちんと叩いてきたんだよ。

 

 心なしか手加減している感じのでこぴんだったんだけどさ。俺は黙ることにしたんだよ。姫野愛ひめのあいは俺が黙ったのを確認したらね。何やらしゃべりはじめたんだよ。

 

「あのね、本来トラックが突っ込んできて星川ほしかわひかるって娘の両親は亡くなってしまったんだけど、あの日に星川ほしかわひかるもいっしょに亡くなる予定だったらしいの。神宮寺ひとりだけ助かる事故だったんだって。死神に嘘ついたら針千本飲ますと脅したから本当の話よ」

「でもひかるちゃんは死ななかったじゃないか!」

 

「うん、それは寿

「俺が?」

「そうよ、神宮寺の神様の力でね」

 

 ――

 

 俺は愕然としてさ。言葉を失い、立ち尽くしてしまったんだ。

「神様の力……」

 俺はひとりごちてね。もうね、信じられないという表情になっていたんだよ。

「おそらく事故の瞬間、神宮寺の神様の力が自覚症状もなく発動したんじゃないかしら?」

 姫野愛ひめのあいは信じがたいことを当たり前のようにさらりと言ってきたんだ。

 

 たしかに俺はあの事故の瞬間にさ。怯えるひかるちゃんの手をとっさにぎってね。ひかるちゃんの身体を抱きしめ、心底守りたいと思ったんだ。ただ、それだけだった。俺は死んでもいい。でも、ひかるちゃんだけは心底救いたいと願ったんだっけ。トラックと車の衝突という突発的な事故だったからさ。瞬時にそれしか願うことはできなかったけどね。嘘偽りのない俺の叫びだったんだよ。

 

「そうだ、俺はただひかるちゃんを守りたい、助けたいと思ったんだ……」

 俺はずいぶんと浸り気分だったからさ。さらりと流そうとしてしまったけどね。

「おい、姫野愛ひめのあい、神様の力って何だよ。危ねぇ、危ねぇ、納得するところだったじゃねぇか!」

 危うく神の力のワードをスルーするところだったよ。

 

「あのねぇ……ここまできてさ、あなたバカなの、理解能力0なの? クラスで1番頭悪い子なの?」

「バカは余計だろ。だいたい神様の力って何だよ。それ聞いて普通信じる奴いないだろ!」

「あなた普段、頭おかしい妄想ばっかしてんだからそれぐらい信じなさいよ」

「は? だから信じれるかってーの!」

「信じなさい。これから言うことは重要なことよ。あなたの父上がならば、あなたもまた。神様の血が流れている証明ということよ。そんなこと小学生でもサルでも理解できるわよ!」

 

 姫野愛ひめのあいは腰に手を当ててさ。勝ち誇ったように言うんだけどね。俺の知力はサル以下ですか、そうですか。

「だからって、そんなの信じられるわけないでしょうが!」

 俺は一般的な常識モラルで反論したんだよ。そしたら姫野愛ひめのあいの表情がね。一瞬だけ聞き分けのない子供を見るような表情で俺を見るとさ。

 

「信じなさい!」

「嫌だよ!」

「信じるのだ‼」

「嫌だ‼」

「信じる者は救われるのだ‼‼」

「誰が信じるか‼‼」

「信じろ‼‼‼」

 ポコッ。

「いたッ!」

 姫野愛ひめのあいの鉄拳制裁炸裂。

 何だこのやり取り! それはとてもバカバカしくてね。深刻に考えるのがバカみたいに思える言葉のラリーだったんだ。

 

「俺が神様の血をひいていると百歩譲ったとして、何の用かね?」

「あのねぇ、何急にえらそうは口調なの? やっぱバカね。そしてエッチね。お願いだから警察に自首して」

「うるさい、うるさい、うるさい」

「バカは同じことを3度言う」

「黙れ!」

「黙らない!」

 姫野愛ひめのあいなりにさ。落ち込んでいた俺を励ますみたいにもとれてね。もうね、姫野愛ひめのあいなりの気遣いだったのかもしれない。俺はというとさ。いつもの自分に戻りつつあったんだ。エロチックなハンサムナイスガイに……。

 

「エロチックなハンサムナイスガイと自分のことを言う変態がいま~す。はい、即通報決定~!」

「俺の心の中を読むな読むな。俺は犯罪者か!」

「そう受け取ってもらって結構だ。犯罪者神宮寺」

「んなわけねぇだろ!」

 みたいなバカバカしい会話が行われてね。お互いにリラックスしたところで姫野愛ひめのあいは本題に入ったんだよ。

 

「まず私がここにきて、神宮寺を呼び出した理由を話さないといけないわね。私は天使であり美少女であるんだけど、美少女戦士でもあるんだ」

 姫野愛ひめのあいは自分に酔いしれたように笑っている。どうだと言わんばかりに笑っているんだよ。

 

 もうね、俺は姫野愛ひめのあいはナルシストでさ。うぬぼれが強い傾向があるなと感じたよ。

「誰がナルシストじゃ!」

 ポコッ。

「いたッ」

 姫野愛ひめのあいの拳骨炸裂。

 だから、俺の心を読むな読むな。

 

「それでね、美少女戦士愛様は極秘任務を受けたの。ここでいう地球ちきゅうと呼ばれる世界で、バカでアホでエッチな犯罪予備軍の神宮寺マモルの教育指導係兼ボディーガードとして地球に赴任する任務がね」

 

第16話 バカでアホでエッチな犯罪予備軍を読む