WEB小説-石川ユーリオ

石川ユーリオのオンライン小説

伝説の勇者なりきり部の奴ら:第18話 キモポエマー

 何だこの絶対勝てる気のしない多数決は! 案の定、ひかるちゃんと姫野愛ひめのあいが手を挙げる。俺は手を挙げない。そして2対1の多数決はあっけなく幕を閉じたんだよ。

 

 決まるの早っ!

 

 星川ひかる:伝説の部長

 

 姫野愛:伝説の将軍

 

 神宮寺マモル:伝説の奴隷

 

 何だこの偽善に満ちあふれた民主主義世界は! 新入部員がいきなり伝説の将軍ですか、そうですか。将軍なんて名称、ファンタジーの世界でしか聞いたことないんですけどォ。部活にそんな役職ないんですけどォ。

 

 マジ信じらんな~いィ。俺は自虐的なギャル風な口調で不満たらたら。その反抗的な目つきは奴隷の分際でと言わんばかしの姫野愛ひめのあいは俺を睨んでくるからさ。

 

 いや、あなた言いましたよね?

 俺に神様の血が流れているとか言いましたよね?

 神様が奴隷なんてしていいんですかァ。

 本当にいいんですかァ。

 そんな不当な神様扱いってありえないんですけどォ。

 やはり不満たらたらな俺はね、ギャル口調を連発したよ。もうね、日めくりギャル口調だよ。

 

 本家ギャルが聞いたら偽ギャルだと笑われるかもしれないけどさ。そんなのはどうでもいいほどに俺は口を尖らせていたんだ。姫野愛ひめのあいはひかるちゃんの手前もあるのかもしれないけどね。

 

 俺の心の中のつぶやきは絶賛ガン無視中。何? 俺、空気なの。生まれてきてごめんなさいってあやまらないといけないの。あくまでも自虐モードな俺。こうなったらツイッターでも開設してさ。奴隷にされた神様のつぶやきでもはじめてやんよ。毎日、悪魔のような女からいわれなきいじめを受けているとつぶやいてやんよ。

 

 そんな空気を真っ向から変えるが如く姫野愛ひめのあいは口を開いたんだ。

「そういや喉かわいたなぁ。何か飲みたいなぁ……」

 姫野愛ひめのあいは視線を俺に向けてきやがった。

 

「うん、うん、わたしも何か飲みたい~♪」

 便乗したひかるちゃん、視線を俺に向けてきたよ。その視線の意味はね、俺が買いに行けっていうことですよね、そうですよね。それぐらいある程度空気読めるんで分かりますよ。



 さっそく奴隷扱いキター━━━━(゚∀゚)━━━━!



 マジ奴隷の経験したのドラクエ5以来なんですけど……。姫野愛ひめのあいは俺の心の中を読んだのか、腕を組みながらこれまたサディスティックな笑みを浮かべているんだよ。しかも、ゆっくりとうなづいているからさ。

 

 中世のファンタジーの世界あたりにいそうな将軍がね。ふむ、よかろうみたいな感じでうなずくんじゃねぇよ。マジで奴隷扱いかよ……。やべー、へこんできたなぁ。ひかるちゃんがうるうるした瞳で俺を見てくるんだけどさ。

 

 それはきっと俺が買いに行ってくれるだろうという期待の眼差しに他ならないんだよ。もうね、俺はひかるちゃんにつくづく弱いんだ。ひかるちゃんのためなら何でもしたいと思ってしまうんだよ。

 

 だから――

「俺でよければ買いに行くけどどうする?」

 ひかるちゃんのうるうる目線に負けて言ったんだけどね。姫野愛ひめのあいはすかさずさ。

「どうするも何もこういうのは奴隷の仕事だ! 訳の分からんこと言うな。奴隷の分際で!」

 と一刀両断してきやがった。

 

 姫野愛ひめのあい、ぶっ殺す。マジぶっ殺す。俺の表情は屈辱にまみれたものとなっていたんだけどね。

「じゃあ、わたしはオレンジジュースが飲みたい~」

 なんて、ひかるちゃんはオレンジジュースをリクエストしてきたんだよ。

 

 もうね、ひかるちゃんの声で癒された俺の表情は穏やかになったんだけどさ。

「将軍命令だ! マッハでスポーツドリンク買ってこい。もちろん自腹でだ」

 なんて、姫野愛ひめのあいの語気が飛んできたんだよ。

 

 自腹ってどういうことよ。他人におごれるほどお金持ってねぇよ。貧乏学生にたかるんじゃねぇよ。姫野愛ひめのあいは相変わらず腕を組んだまま偉そうにしているんだけどね。俺の心の中を読んでいるのだろうが、いぜんとしてガン無視中だ。

 

 俺の表情はまたもや屈辱にまみれたものとなったんだ。呪文が使えるのならば姫野愛ひめのあい道徳モラルの呪文かけて~。姫野愛ひめのあい、マジぶっ殺すと俺は文句たらたら。つーか俺の頭の中、故障寸前、崩壊寸前だよ~。

 

 でも、そんな俺の心中は無視するかのようにさ。

「マーくん、いってらっしゃーい!」

「神宮寺、マッハで早く行け、早く、もたもたするな」

 ひかるちゃんの優しい見送りとは裏腹にね。姫野愛ひめのあいは早く行けとあおってくるんだよ。姫野愛ひめのあい、お前なぁ? 日本はおもてなしの国なんだぞ!

 

「あぁ、わかったよ、早く行けばいいんだろ!」

 ふてくされ気味に部室をでる俺。姫野愛ひめのあいへの文句を声にだしながら歩いたんだけどさ。廊下で俺とすれ違う生徒たちは怪訝な顔で俺を見るんだよ。どうせ独り言をしてる危ない奴だと思われているんだろうな。もうね、どう思われてもいいよ。やけくそだ、やけくそだー!

 

 ふんッ。

 

「マジぶっ殺す。マジぶっ殺す。マジぶっ殺す。マジぶっ殺す」

 俺の独り言はリズムのように刻まれていく。

 

「マジぶっ殺す。マジぶっ殺す。マジぶっ殺す。マジぶっ殺す」

 と、その時、俺を見た女生徒が悲鳴を上げた。

「きゃ! 殺人鬼の神宮寺!」

 俺は、「は?」という顔で女生徒を見るとね。クラスメイトの恋愛の何たるかを知っている風を装う女子が血相をあげて逃げていったんだよ。

 

「ちょ! 違うんだ、違うんだ。待ってくれ?」

 俺は慌てて恋愛の何たるかを知っている風を装う女子を追いかけようとしたんだけどさ。

「いや~、わたしを追いかけないで~。わたしに乱暴しないで~」

 なんて叫びながら、恋愛の何たるかを知っている風を装う女子は超スピードで俺の視界から消えていったんだ。これ以上、追いかけても疲れるだけだからね。追いかけるのやーめっぴ。

 

 さて、またもやよからぬ俺の噂が流れるのではないかと危惧しつつさ。学校内にある自販機へ到着したんだよ。ひかるちゃんの分のオレンジジュースと姫野愛ひめのあいの分のスポーツドリンクを購入してね。俺の分も購入しようと財布を見たんだけどさ。オーマイガー! お金がないんだよ。

 

「うう、くそぅ! よりによって2人分の飲み物代しかないのかよ!」

 俺はひとりごちたよ。あぁ、ごちごちだよ。あえなく自分の分はあきらめることにしたんだ。自分の分も購入してね、ついでにひかるちゃんや姫野愛ひめのあいの分の飲み物を買ってくるならともなくさ。これじゃ完璧に奴隷だよ。

 

 いや、パシリだよ、ちくしょー。自販機の下に小銭落ちてねぇかな。おつり取り忘れた人いねぇかな。俺なりに考えられる手を試してみるもね。現実は厳しかったよ。小銭なんてありゃしないんだよ。とほほ……。




◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎




 疲労感がいっぱいのまま部室に戻ってさ。ひかるちゃんにオレンジシュース。姫野愛ひめのあいにスポーツドリンクを渡したんだ。

「マーくん、ごちそうしてくれてありがとう~♪」

 悪意のないひかるちゃんの発言でたー! それはいいとしてね。

「ふむ、ごくろう。それにしても遅かったな。私は早くって言ったよな?」

 なんて、姫野愛ひめのあいはふてくされた感じ言ってきやがった。マジぶっ殺す姫野愛ひめのあい。何なんだ、お前のその言動はよ。

 

 しかも姫野愛ひめのあいは俺からぶんどるようにスポーツドリンクを奪いやがったよ。その行為、マジムカツクんですけど。俺も喉渇いてるんだよなぁ。ちらりと姫野愛ひめのあいを見るとね、もうスポーツドリンク飲み終わっているしさ。

 

 姫野愛ひめのあいは残念でしたという顔で俺を見ているんだよ。相変わらずサディスティックな娘だな。ひかるちゃんは俺の心中を知ってか知らずかね。

「あれ? マーくんは何も飲まないの?」

 なんて、聞いてきてくれたんだよ。マジ天使ひかるちゃん。もう、大好きだよひかるぅ♪

 

「いや、お金がなくて自分の分買えなかったんだよ」

 なんて、俺が寂しそうに言うとさ。

「自業自得ね」

 とすかさず姫野愛ひめのあいがぽつり。もうね、俺のカンニング袋がプチって切れたよ。

 

「いい加減にしろ姫野愛ひめのあい! どこが自業自得なんだ。だいたい俺、悪いことしてないだろ!」

 俺はついつい興奮して言ってしまったよ。今ので余計喉渇いたじゃねぇか。からからだよ。

 

「そっか~、じゃあマーくん、わたしのオレンジジュース少しあげようか?」

 ひかるちゃんは優しく微笑んだ。

「え?」

 俺の胸の鼓動は高鳴ってね。緊急事態のお知らせが鳴り響いたんだよ。

 

 ピーポー、ピーポー。

 緊急事態発生!

 緊急事態発生!

 

 ひかるちゃんの天使の囁きが発生しましたぁ~。ひかるちゃん、マジ天使なんですけど。あぁ、オレジジュースに突き刺さっているストローが愛おしくてまぶしくてさ。そのストローはひかるちゃんのお口が触れていたのであります。

 

 夢見る青年は恋するあの娘のストローにそっと口づけをするように……。

 ふふふ。

 愛と青春の旅立ちかもしれない。

 ぐひひひ。

 これはいわゆる間接キッス。

 俺とひかるの恋愛3部作の第1章始動しちゃうんじゃね?

 

 俺はこの瞬間のために生きてきたといっても過言ではない(ちょっと大げさ)。ストローからはじまる恋があってもいいじゃない。そんな恋だってあるよね。だって人間だもの。

「おい、そこの!そこらへんの水道水でも飲めばいいだろ!」

 姫野愛ひめのあいは俺の思考をぶった斬りやがった。

 

第19話 キラーパスを読む