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伝説の勇者なりきり部の奴ら:第19話 キラーパス

 お前は他人の思考に土足で入って切り刻む斬鉄剣か。最後、相田みつを風に終わらしたのにキモポエマー呼ばわりかよ。もうね、相田みつをさんに失礼だろ。俺にだって失礼だろーが!

 

 くそぅ、俺の美学ポエムを踏みにじるとはね。ちとムカついたからさ。

「ひかるちゃんが俺にオレンジジュース飲むか? と言ってくれたんだ。姫野愛ひめのあいは関係ないだろ。俺とひかるちゃんの問題に口をはさむな!」

 なんて、言ってやった。あぁ、言ってやったね。

 

 まるで俺とひかるちゃんが恋人同士でさ。些細なことから喧嘩してしまってね。それを姫野愛ひめのあいがしゃしゃりでてさ。うまくまとめようとしたみたいなね。俺が第3者的な扱いで文句を言うみたいな感じかな。とにかく姫野愛ひめのあい、しゃしゃりでるなってことよ。

 

「あぁ、ごめん。神宮寺に口はさまないことにするよ」

 なんて、姫野愛ひめのあいは悪びれる様子もなく言ってきたんだよ。姫野愛ひめのあい、言えば分かるのね。俺はほっと一安心したんだ。

 

「ひかるちゃん、ありがとう。オレンジジュース少しもらうね」

 と俺は期待に胸を躍らせてさ。オレンジジュースをひかるちゃんから受け取ろうとした矢先、姫野愛ひめのあいがひかるちゃんのオレンジジュースを奪い取ってね。ごくごくごくと一気にオレンジジュースを飲んでしまったぁぁぁぁぁぁぁぁ!

 

 それはもう本当に一瞬の出来事だったんだよ。

「俺のオレンジジュースが……」

 絶叫に近い俺の悲鳴が部室内を駆け巡ったんだよ。

「あぁ、俺のオレンジジュースが……」

 俺の間接キッスが……。これにはひかるちゃんも唖然とし、俺は呆然とし、姫野愛ひめのあいは毅然となっていたよ。

 

「いや~、私まだ喉渇いていたみたいだからさ、ついつい飲んじゃった」

 なんて、悪意があるのか、ないのか分からないみたいな感じで姫野愛ひめのあいが言ってきやがった。しかも、オレンジジュースはすでに空っぽだしね。

 

 俺に口をはさまないけどさ。俺がもらえるはずのオレンジジュースのストローには口をはさみ飲み干しやがった姫野愛ひめのあい、マジぶっ殺す。青春のバカ野郎~。俺の青春を返せ~。

 

 もうね、ブーイングだよ。ブーイング。ブー、ブー。俺はどうやら地団太を踏んでいたらしてくてね。それを楽しむように満足げに姫野愛ひめのあいは俺を見てくるんだよ。つられてひかるちゃんも俺を見てくるとさ。

 

「マーくん、何かこんなことになっちゃったけど、いつかきっといいことあるよ」

 なんて、慰めてくれるひかるちゃん。心優しいひかるちゃんありがとう。これが日本の大和撫子だよ、ひかるちゃん。てへっ。

「だから神宮寺、喉が渇いたんなら水道水飲めよ!」

 あくまで水道水押しの姫野愛ひめのあい。お前は水道局の回し者か。お前が水道水飲めと言ってやりたいぐらいだよ。

 

 俺が残念そうな顔をしているとね。

「それにマーくん、今日誕生日でしょ?」

 なんてひかるちゃんはニコニコ笑顔で聞いてきたんだよ。

「うん、実はそうなんだよね」

 ひかるちゃんは俺の誕生日をおぼえてくれてる。もうね、ひかるちゃん大好き♪

「きっとマーくんのお母さん、ごちそう作って待っているから大丈夫だよ」

 しっかりフォローしてくれるひかるちゃんは相変わらずマジ天使だったんだ。

 

「うん、毎年、手作りケーキとか作っているようだしね」

「いいなぁ」

 なんて、ひかるちゃんは羨ましがるとさ。ひかるちゃんのお腹がぐぐーと鳴ったんだよ。喉渇いたりお腹空いたり、ひかるちゃんは育ち盛りなのであります。そんな俺も喉渇いたり、お腹空いたりしてきたわけでね。

 

「ひかるちゃん、今日は伝説の勇者なりきり部の活動はこれで終わりにして帰ろうか?」

 なんて、提案することにしたんだよ。

「そうね、帰りましょう」

 とひかるちゃんは大賛成してくれたんだ。

「ふむ、神宮寺家には用があるしな」

 と姫野愛ひめのあいの用ある宣言。

 

「おい、何の用があるっていうんだ?」

 俺は思わず聞き返したんだけどさ。すると姫野愛ひめのあいはね。

「まぁ、いろいろだよ」

 なんて、意味深に言ってくるんだよ。もうね、いろいろって……、何だよ。姫野愛ひめのあいの突然の出現によってね。俺の人生は思わぬ方向に動きだしたんだけどさ。

 

 俺的には今日はもうこれで姫野愛ひめのあいとはバイバイしたかったのが本音なんだよ。突然、神様の血が流れているとか言われて頭の整理もしたかったしね。いろいろと考えたかったんだ。

 

 それに俺の布団に描いた宝の地図おねしょの行方も気になるしさ。布団におねしょしたままにしてきたの? なんて、きっと母親みゆは怒っている予想はつくけどね。

 

「じゃあマーくん家でお誕生会やろうか?」

 なんて、ひかるちゃんが提案してきたんだ。明らかにひかるちゃんはさ。俺の母親みゆが作る料理やケーキ目当てだというのは分かるよ。

 

 ちなみに毎年、俺の誕生日にひかるちゃんとひかるちゃんのおばぁちゃんがやってきてね。ささやかながら俺の誕生日が行われてきたんだよ。けれども今回は事情が違ってさ。

 

 ひかるちゃんのおばぁちゃんは入院中だしね。父親のぼるは亡くなってしまったしさ。もうフルメンバーで祝うことはできないんだよ。そういや、唯一、去年の俺の誕生日に父親のぼるが参加してたっけ。

 

 俺はもう父親のぼるのことはどうでもよくて、空気的な扱いをしてしまったけどね。興味深いことを俺に言ってきたんだよ。

「お前がいつかことになるかもしれないな」

 そう言って父親のぼるは笑いやがった。本当に久し振りに見る父親のぼるの笑顔だったよ。いつもしかめっ面ばかりしているくせによ。俺はまた現実と小説がごっちゃになったと思ってあきれてたっけ。何が世界を救うだよ。のぼるよ、リアルの世界に戻ってこ~いって言いたかったよ。

 

 姫野愛ひめのあいは机に置いていたかばんを持つとさ。

「神宮寺、エロいことばかり考えてないで行くぞ!」

 なんて、キラーパスしてきたんだよ。

「別にエロいこと考えてねぇから!」

 慌てて俺は否定したんだけどね。ひかるちゃんは痴漢を見るような目で俺を見てくるんだよ。ひかるちゃん、俺を痴漢を見るような目で見ないで~。誤解なんだってぇ。

 

「それに姫野愛ひめのあいを俺の家に連れて行くなんてOKだしてないし……」

 と言いかけようとした時にさ。姫野愛ひめのあいが俺の耳元で囁いてきたんだよ。

「あなたに話し合わせて伝説の勇者なりきり部まで入部したのにそんな扱いを私にしていいのかしら、ねぇ?」

 姫野愛ひめのあいの脅しに簡単に屈服した俺はさ。イエスと答えるしかなかったんだよ。イエス、イエス、イエス……。もう、イエッサでも何でも言ってやんよ。

 

 姫野愛ひめのあいは、ふむよかろう的な感じでうなづきながら、

星川ほしかわひかるさん、男ってエロい生き物だから気をつけなさいね。神宮寺だって、一応は男なのだから」

 なんて、言ってくるんだよ。

「一応は余計だろ!」

 すかさず俺はツッコんだよ。そしたら、

「マーくんはそんな人じゃないよ」

 なんて、ひかるちゃんは否定してくれたんだよ。ひかるちゃん、マジ天使。天使すぎる。生まれ持っての天使ひかるちゃんと呼びたいよ。まぁ、とにかく。俺はエロ呼ばわりされてね。ひかるちゃんから痴漢扱いされそうになったんだけどさ。復活の兆しが見えたから調子にのることにしたんだよ。

 

「そうだとも、そうだとも、俺は純情可憐、エロいことなんか考えたりしないんだ。あはははははは。あはははははは。」

 ひかるちゃんも俺のこのテンションの上がりように若干引きつつもね。

「だよね~♪」

 なんて、不思議なポーズまでして同意してくれたよ。姫野愛ひめのあいはブーイングのポーズをして親指を下にしてきやがった。

 

「はたしてどうかしらね。ふふふ。神宮寺は星川ほしかわひかるさんのことをこう想像していたのよ」

 なんて、姫野愛ひめのあいは俺に聞こえないようにひかるちゃんの耳元でごにょごにょとやるからさ。あせった俺はね。

 

「ひかるちゃんに抱きつきたいとか、チューしたいとか、ストローからはじまる恋をしたいとか想像してないんだからね。絶対~」

 なんて、ついつい口からぽろりと言ってしまったんだよ。その瞬間、姫野愛ひめのあいは俺に向かって勝利者の笑顔を見せてきたよ。お主、自ら墓穴をほりおったなという目だったよ。やべー、やっちまったじゃねーか!

 

「神宮寺、ひっかかったな。私は星川ほしかわひかるさんに耳元で囁く振りしただけだよーん!」

 俺は悟ったね。姫野愛ひめのあいにはめられたのだと……。想像していたことを自らしゃべって自爆してしまったみたいなさ。俺は恐る恐るひかるちゃんを見たんだけどね。

 

「お腹空いた~、お腹空いた~、お腹空いた~」

 ひかるちゃん、お腹が空きすぎてぐずりだしていたんだよ。俺はそのおかげであんなことやこんなこと、エロいことを想像していたことやさ。姫野愛ひめのあいにはめられたことをね。

 

 ひかるちゃんの情報伝達に入らずにすんだことに安堵したんだ。何という強運なんだよ俺。ひかるちゃん、お腹を空かせてくれてありがとう。一時はどうなるかと思ったぜ! 気を取り直した俺はさ。

「じゃあみんなで俺ん家に行こう。きっとごちそうが待っているぞ。おー!」

 なんて、何事もなかったように右手を高々とあげたんだけどね。お腹を空かせたひかるちゃんのテンションものりのりに上がってさ。

「ごちそうだぁ~!」

 なんて、叫んでね。いっしょになって右手を上げたんだ。

 

 姫野愛ひめのあいはと言うとさ。

「そんな盛り上がりの茶番はいいから、早く家に連れて行け!」

「いたッ」

 姫野愛の足蹴り炸裂。

 

 俺はそのまま部室の出口付近まで吹っ飛んでいったわ。

 

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