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伝説の勇者なりきり部の奴ら:第21話 挑戦状

 姫野愛ひめのあいは母親みゆに触れたりして何やら確かめるとね。

「残念ながら神宮寺の母上は魔王に石化されたみたいね」

 なんて、腕を組みながら淡々と述べたんだよ。俺は急ピッチに進んでいく魔王の存在にさ。呆気に取られたように立ち尽くすしかできなかったんだ。思わず、

「マジかよ。母親みゆが石化なんて……」

 なんて、ひとりごちてしまったぐらいだよ。

 

 ひかるちゃんはね。俺と姫野愛ひめのあいの一連の石化トークのやり取りを眺めていたんだけどさ。ニンマリしながら掌をこぶしで軽く打つとね。閃いちゃったみたいな表情になったんだよ。

「そうね、わたしたち勇者なりきり部の部員数が3人になり、強大な勇者の力を恐れた魔王がわたしたちを倒しにきたの。手はじめにマーくんの家から襲いかかる気ね。そんなことはさせない! 勇者ひかる参上!」

 なんて、ヒーロー戦隊みたいなポーズをとりながらさ。もっともらしく言ったんだよ。

 

 え? ひかるちゃん、どうしちゃったの? 俺はひかるちゃんの言動に唖然としたんだけどさ。ポーズをとった時のたわわなマシュマロの揺れ動く姿にね。一瞬にして心奪われてしまったんだよ。思考回路が一瞬にして瞬殺されたって感じ。俺がサイボーグだったらショートして、再起不能になってたわ。

 

 もうね、そんな俺の姿をひかるちゃんは見るとさ。ひかるちゃんは自分の中二病演出に俺が心奪われてね。感動したと受け取ったらしくて、どうだ凄いだろ~、誉めて~、撫でて~と言わんばかりの表情になってニンマリしていたんだよ。

 

 きっとひかるちゃんが犬だったらさ。しっぽふりふり全開なご機嫌状態なんだろうよ。どうやらひかるちゃんはね。魔王のワードに反応したみたいで伝説の勇者なりきり部の魔王討伐モードのスイッチが入ってしまったらしいんだよ。

 

 どうやらひかるちゃんはさ。魔王演出サプライズ誕生日パーティだと勘違いしているみたい。母親みゆが演技で石化のふりをしていると思っているみたいなんだよ。もうね、俺は今日一日の流れからしてね。そんな魔王演出サプライズは絶対あり得ないと判断したんだよ。俺まで魔王演出サプライズだ、ひゃっほーなんてしてたらやばいでしょ。一応、俺、神様の子らしいからさ。

 

 満足げなひかるちゃんはね。俺にこっそりと耳打ちしてきたんだよ。ひかるちゃんの吐息が俺に耳に当たってくるんだよ。あぁ~、ひかる~。あぁ~、今はだめだよ~。なんて感じていると、ひかるちゃんはね。

「次はマーくんの番よ!」

 なんて、ささやいたんだ。

「は?」

 俺はどっからでたのかと己を疑いたくなるほどにさ。突拍子もない声をだしてしまったよ。

 

「俺の番って……?」

 俺は何を言ってるんだ、この天然娘はという感じでひかるちゃんを見たんだけどね。

「早くマーくん……」

 耳打ちしたひかるちゃんは目を輝かせて俺を見つめてくるんだよ。おそらく伝説の勇者なりきり部としての中二病演出をさ。俺にも催促しているのだろうよ。俺はつくづくひかるちゃんに弱い。本当にひかるちゃんに弱いんだよ。この状況でも俺はひかるちゃんの要求に答えたくなる愛の奴隷なんだよ。ごめん、俺、リアじゅうだからね。

 

 だから俺はさ。こんなことをしている場合じゃないのにね。

「トゥ~!」

 なんて、叫び声をあげるとさ。空から着地したポーズをとってね(本当は軽くジャンプしてフローリングの床に着地しただけ)

「空高く舞い降りる月に誓って正義のジャスティスを下す刻がきた。全知全能の神様の血に誓って俺は言おう。魔王よ消え去れ、魔王よ我に立ち向かうのはやめるのだ。俺は魔王に正義のジャスティスの鉄槌を振り下ろしたくはない。今ならまだ間に合う……だから……あと何言おうかな……」

 

 俺はこれ以上言うとさ。さらにボロがでそうになってきたよ。

「……ということで神宮寺マモル見参!」

 なんて、最後、完全なやっつけ仕事ともとれる感じで言ってやったんだよ。カンフー映画で観たことのある太極拳風動作のおまけつきで言ってやったよ。ひかるちゃんは俺の中二病演出にご満悦のようだ。手を叩いてニンマリとこちらを見ているんだよ。

 

「正義もジャスティスも意味同じだから。やっぱりバカでアホで変態で……」

 以下、姫野愛ひめのあいのとめどない罵倒が飛んできてね。俺は耳をふさぎたくなってしまったよ。あまりにもガミガミ言うものだから耳をふさぐ俺。引き続き、あきれ顔の姫野愛ひめのあい

 

 耳はふさいでも足はでるということでさ。

 姫野愛ひめのあいの足蹴り炸裂。

「いたッ」

 俺は空を切るように吹っ飛んだよ。俺ってこんなやられキャラだったろうかと思うほどにね。姫野愛ひめのあいからいわれなき暴力を受けているんだよ。

 

 もうね、マジ姫野愛ひめのあいに「次は法廷で会おう!」なんて、言ってやりたい。いわれなき暴力を受けていると告訴したい。まぁともかく俺的にはこんな茶番劇をしたわけだしさ。母親みゆのことだから、

「あなたたちバカじゃないの!」

 なんて、呆れ顔で笑ってきてもよさそうなものだったんだけどね。母親みゆは微動だにしないんだよ。まるで姫野愛ひめのあいが言ったようにさ。本当に石化でもしてしまったんだろうか。

 

 そんなことをしているとね。部屋がゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴって奇妙な音がして揺れはじめたんだよ。こんな時に地震かよって思ったんだけどさ。どこからともなく声が聞こえてきたんだよ。

「ふははは。魔王に挑戦状を叩きつけるとは、お前たちは身のほどを知らなすぎるだ。それに神宮寺マモルはさすがは神様の血を引いているだけはあるだ。己の力にさぞかし自信がおありのようで。フヒヒ。我は未完となり呪われた書物『はてしない英雄物語』の呪いから誕生した魔王ハンプティだ!」

 

「魔王キタ━━(━(━(-( ( (゚∀゚) ) )-)━)━) ━━ !!!!!」

 なんて、ひかるちゃんは大喜びなんだけどね。ひかるちゃん喜んでる場合じゃないでしょ。マジやばい雰囲気なんですけど。声のした方向を見るとさ。うさ耳をつけたバニーガール風いでたちの少女かと思いきやね。無精ひげをはやしたやばめのおじさんが現れたんだよ。もうね、お腹はぽっこりしていてさ。触ると柔らかそうだよ。触るとトランポリンのように跳ね上がりそうだよ、うぇ。

 

 千円ぐらいつまれても絶対にお腹は触りたくない。こんな奴がいきなり家に入ってきたら即通報レベルでしょ。俺は思わず駅前でセーラー服の女装をして歩いていたおじさんをね。見かけた時のことを思いだしてしまったよ。

 

 道行く人たちがさ。興味本位な視線をおじさんに投げかけていたっけ。案の定、俺は違う意味でバニーガール風いでたちの無精ひげのおっさんに釘付けとなったんだよ。おそらくひかるちゃんも姫野愛ひめのあいもさぞかし釘付けだったことだろうよ。

 

 俺たちの視線を感じた魔王ハンプティはね。

「いやん、そんないやらしい目でおらを見るでねぇ!」

 なんて、いじらしく言ってきやがった。しかも頬をピンク色に染め上げてる。お前は乙女か!

 

「「「見てねぇよ」」」

 俺たちはまるで意思疎通でもしてたかのようにさ。同時に同じ言葉を発してしまったよ。俺らの言葉がハモるって凄くね? それほどに魔王ハンプティのいでたちは衝撃的だったんだ。もうね、ピカソの世界に突然足を踏み入れてしまった感じとでも言うのかな。芸術って爆発だよね。俺の頭も爆発しそうだけど。

 

 どっからどう見てもさ。上から見ても下から見てもおじさんのバニーガール風いでたちの魔王ハンプティはね。気持ち悪く両手で胸元を押さえているんだよ。もうね、違う意味で悩殺だよ。瞬殺だよ。たしかに魔王ハンプティは小太りだからさ。胸の膨らみはあるんだけどね。俺たちはいっせいに、

「「「キモッ」」」

 と叫んだよ。その後、俺だけはね。

「おぇッ」

 と吐き気がもようしてしまったんだ。

 

 ビジュアル的にも即強制送還レベルだろ。早く魔界にでもどこへでも帰ってくれ。でも、俺の家には2度と来るなよ。本当に頼むからさ。普段は無表情の姫野愛ひめのあいでさえ、汚物でも見るような感じでね。魔王ハンプティを見てるんだよ。見ているというより、見下している感じだな。

 

 ひかるちゃんに至ってはさ。

「いつかバニーガールの衣装着てみたいと思った時期があったけど、もう一生着ることはないわ。こんな幻滅体験はじめて~、いや~」

 なんて、頬をぷんすか膨らませているぐらいだからね。

 

 俺はバニーガール姿のひかるちゃんを思い浮かべてさ。がっくりとしてしまったよ。ひかるちゃんのバニーガールの夢をね。魔王ハンプティはいとも簡単にぶち壊したんだよ。もうね、ひかるちゃんのバニーガール姿は一生拝めないのかよ。

 

 いつかバニーガール姿のひかるちゃんを……くそう。魔王ハンプティのバカ野郎~。姫野愛ひめのあいは変態を見るような感じでね。俺をいちべつした後、魔王ハンプティを指差し、

「そんなキモイ格好で本当にあなたは魔王なのかしらね? あなたみたいなのをバニーガール協会の方たちが見たら、即イメージ悪化するのでバニーガールの格好を2度としないでくれと最終通告することでしょうね?」

 なんて、無表情のまま冷めた感じでさ。それでいて挑発するように言い放ったんだよ。

 

 魔王ハンプティは一瞬、困ったような表情でおどおどするんだけどね。相当に姫野愛ひめのあいの汚い口攻撃に精神的ショックを受けたみたいなんだよ。俺は姫野愛ひめのあいに今日の改心の一撃賞を与えたい。よくやったと誉めてやりたい。

 

 小さな子供だったら高い高いしてあげたい。何様だという突っ込みはなしでよろしく。それほどに小気味よかったんだけどさ。あれだな、自分が言われるのと違ってね。他人が姫野愛ひめのあいからきつく言われているのを見るのはさ。心地よくて楽しいものだなと我ながら思ったよ。

 

 たしかにバニーガールのイメージを悪くした魔王ハンプティはね。ある意味まさに魔王だろうよ。とかなんとか思いながら俺がニヤニヤしているとさ。

「女装趣味の魔王がいたっていいでねぇか? 何か文句あるけ!」

 なんて、魔王ハンプティはいきり立ってツバを飛ばしながらしゃべってきやがった。相当興奮しているみたいなんだよ。お前は赤に反応して突進してくる牛か!

 

 もうね、微妙に田舎くさい口調がね。本当にお前は魔王なのかと疑いたくなるのだが……。そんなことよりも見てしまったよ。見てはいけないものを見てしまったよ。大事なことなので2度言ったんだけどさ。

 

第22話 汚い手口を読む