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伝説の勇者なりきり部の奴ら:第23話 愛の巣

 俺は現実を直視する。母親みゆを石化し、ひかるちゃんをも石化してさ。俺とラブラブになるだと? 魔王ハンプティ! てめぇ、ふざけたこと言ってんじゃねぇよ。俺の怒りは加速していき、魔王ハンプティを睨んだんだ。そして、

「魔王ハンプティ! お前だけは絶対に許さない!」

 なんて、叫んだんだけどね。そんな怒り狂ってる俺を姫野愛ひめのあいがいちべつするとさ。俺の肩に手を触れてきたんだ。

「神宮寺じゃ魔王ハンプティを倒すのは無理だ!」

 なんて、告げてきたんだよ。もうね、俺は無言のまま肩に触れられた姫野愛ひめのあいの手を払いのけたんだよ。

 

 姫野愛ひめのあいはそれ以上、何も言わずにね。ただ俺を見ているんだよ。そして、一言。

「神宮寺と魔王との一騎打ち、私はいっさい手だしはせん!」

 なんて、腕を組んで言い放ったんだよ。姫野愛ひめのあいは完全に戦士の目つきに変わっていたんだ。俺は姫野愛の発言が妙に嬉しくてさ。何だか知らないけど武者震いしたんだよ。

 

「例え負けると分かっていても、俺はやるだけやんよ。それが俺だから……。それが神宮寺マモルだから……」

 なんて、シリアスモードで言うとね。俺は魔王ハンプティの方へ歩いていったんだ。戦争反対、平和主義の俺ではあるけどさ。魔王ハンプティは殴らないと気がすまない気分だったんだよ。魔王ハンプティは何をとち狂ったのかね。両手を広げてきやがった。

 

「マイダーリン! 甘く熱い口づけをするだよ?」

 なんて、魔王ハンプティは甘えた感じで言うとさ。目を閉じて、口を尖らせてきやがった。もうね、完全なるシリアスモードになった俺はね。お構いなしに魔王ハンプティの顔面めがけて殴ったんだ。拳は魔王ハンプティの顔面をヒットしたんだよ。目を開けた魔王ハンプティは鬼の形相となってさ。

 

「神宮寺マモル! か弱き乙女をぶっただね。ぶっただね!」

 なんて、ぶつぶつとつぶやくとね。魔王ハンプティの鬼の形相のキックが俺の腹を直撃したんだ。

「いたッ」

 あまりの痛みに俺は気を失いそうになったよ。けれども痛みを我慢してふんばったんだ。我ながらやせがまんしすぎかもしれない。続けて魔王ハンプティはジャブ、ストレート、フックを繰りだしてきたんだけどさ。

 

 俺は避ける事もできず、サンドバッグのようにやられるだけだったんだ。まるで俺をもてあそぶかのような攻撃にね。俺はついにはがくんと足の膝を曲げてさ。床に倒れそうになってしまったんだよ。

「くっ」

 もうね、勝てる気がしない戦いって、ただ痛いだけなんだなって思ったよ。俺はなおも魔王ハンプティを睨み続けたんだけどね。魔王ハンプティはどこか冷淡な表情でさ。

 

「おらに逆らうとこうなるだよ。これに懲りておらに服従するだ。おらの言うこときくだ。おらのダーリンになるだ。おらを愛するだ。おらとチューすれば許してあげてもいいだよ。ただしチューは大人のチューだよ。レロレロ。レロレロ~」

 なんて、キモいことを言ってきやがるんだよ。もうね、レロレロの擬音がこれほどキモいと思ったのこれが初めてだわ。

 

「ふざけるな。てめぇ何かに誰が服従するか。チューなんて死んでも絶対するかよ」

 俺は表面上はあくまでも強気だったんだけどね。でも、身体はすでに悲鳴をあげていたんだよ。もうね、我ながらめっちゃ弱いな俺。やせ我慢しすぎだな俺。

 

「反抗的な態度は許さないだ。こうなったら、こうなったら……」

 魔王ハンプティは指先で弧を描くとさ。

「―●―【転がる石のようにコロコロとなーれい】―●―」

 と呪文をつぶやいてね。素早い動きで俺に近づいてきたんだよ。俺は反射的に避けようとするが間に合わない。現実的な問題として部屋が狭いしさ。うまく動き回れないんだよ。それでも何とか避けようと最善をつくしたんだけどね。

 

 ついに魔王ハンプティの指先が俺に触れたんだよ。

「あ!」

 俺は思わず、悲鳴をもらしたらさ。魔王ハンプティの野郎、勝ち誇った顔で俺を見るんだよ。もうね、俺の身体に流れる血がみるみる凝固していく感覚が支配していく。

 

 手、足、顔が少しずつ石になっていく。魔王ハンプティは石化していく俺を満足げに見るとね。

「おらの魔界の愛の巣に連れて行き、おらのものになるまでずっと鎖につなぐだよ。グヒヒ。神宮寺マモルをゲットだ♪」

 なんて、よだれをたらしながらわらっている。

 

「ごめん、ひかるちゃ……、俺、ひかるちゃんのこと守れ……」

 言い終わる前に俺は完全に石化してしまった。




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 私はヒメこと姫野愛ひめのあい。たった今、神宮寺マモルは魔王ハンプティの呪文によって、あっけなく石化した。神様の能力保有者らしからぬ最低の貧弱さを持っての敗北。負けると分かっていても立ち向かう勇気だけは誉めてやろう。

 

 奴隷の分際でよくぞがんばった。魔王ハンプティが神宮寺マモルを狙う理由はめっちゃタイプなのもあるが、真の目的は神様を己のものにすることにより、さらなる魔王自身の強化だろう。

 

 魔の者に強大なパワーをつけさせるのは何が何でも阻止せねばならん! 天界魔界大戦争さいごのせいせんの悲劇は何としても繰り返してはならんのだ。私は元がつくが将軍ヒメ様だ。この地球ちきゅうでは姫野愛ひめのあい様だ。

 

 悪いが私は圧倒的に強い。相手がどん引くぐらい強い。物語の山場をぶち壊して、あっけなく終了させるぐらい強い。強い。強い。強い。ヒメちゃん、めっちゃ強いんですの~。

 

 ウヒョヒョヒョヒョヒョ!

 

 私がこういう人物キャラだというのは魔王ハンプティも知る由もないだろう。ウヒョヒョヒョヒョヒョ!

 

 普段からストーンフェイスを維持し、周りからは何を考えているか分からないと言われるほどだ。けれども私は久しぶりに魔の者をぶちのめす喜びでいっぱいだった。ぶちのめしたら地球のアニメ、ドラマ、映画のDVD、ライトノベルを大人買いして天界に帰るんだもん。

 

 そして、戦いで精神的に疲れたから少し休みたいともっともらしい理由をつけて、ずっと家に引きこもって地球の映画を観たりライトノベルを読みふけたりするんだもん。ウヒョヒョヒョヒョヒョ!

 

「おい、そこの小娘! さっきから何ニヤついているだ?」

 なんて、魔王ハンプティは怪訝な表情で私を見てきた。いかん、いかん。ストーンフェイスを維持していたはずが、ついついニヤついてしまうなんて。

 

 ヒメちゃんのバカ。ドジ。もうお嫁にいけないッ!

 

 一通り私自身をののしって、いつもどおりのストーンフェイスに戻る。これが私のストーンフェイス維持方法。誰にも今のところバレてはいない。私は何事もなかったかのように、

「別に……。魔王ハンプティには関係ないことだわ」

 なんて、淡々と言ってやったわ。我ながらカッコいい私。

「んだ。ならおらもここにはもう用がないんで神宮寺マモルを連れて帰るだよ。あんたも達者で暮らせよ」

 なんて、ブサイク魔王ハンプティがブヒブヒ言ってきやがった。こりゃ、こらしめないといけないわね。

 

「待ちなさい。誰が帰っていいと言ったのかしら?」

「帰るのに誰かの許可が必要なのけ?」

 私と魔王ハンプティは対峙していた。私は真顔のまま魔王ハンプティと睨みあう。ここでこんなこと言ってやりますわ。

「ここでは私が法律なの。私がだめと言ったらだめなのよ。これは警告よ。魔王ハンプティ待ちなさい。誰が帰っていいと言ったのかしらね?」

 肩に手を回してポーズまでつけて言ってやった。我ながらヒメちゃんカッコいい~♪

 

「小生意気な小娘め。あんたも石化するだよ」

「やれるもんならやってみなさい」

 私は魔王ハンプティを挑発する。魔王ハンプティは顔を真っ赤にすると指先で弧を描く。

 

「―●―【転がる石のようにコロコロとなーれい】―●―」

 なんて、叫びながら魔王ハンプティは私に突進してくる。こんな狭い部屋で逃げるなんてバカげている。圧倒的なチート能力を見せつけてやる! だから私はあえて逃げない。魔王ハンプティは私の胸を鷲掴みにする。どうやら相手に触れないと石化できないらしい。

 

 ちょ! おかま野郎だとしても種族は男。私は思わず、「いやん」と悲鳴をあげそうになるが、必死に何でもない振りをする。胸を鷲掴みにされてドキドキしている。しかも微妙に魔王ハンプティは揉んでるし。何なのよ、これ。いやん、そこはだめと声がでそうになる。

 

 魔王ハンプティは私の胸を揉みほぐしながら、

「小娘よ、石化するだよ。グヒヒ」

 と満足げな笑みを私に向ける。私の身体に流れる血がみるみる凝固していく。けどね、私はチートすぎるほど強いということをお忘れなく。

 

「―●―【転がる石のようには絶対になりませんわ】―●―」

 私は呪文を言い放つ。そして、私の胸を揉んでいる魔王ハンプティの手を振りほどき、そのまま膝蹴りをお見舞いする。

「うげっ! バカな。石化を防いでくるなんて……」

 

 魔王ハンプティは悲鳴を上げ膝をついて倒れる。もうね、私は小説で例えるならば最初から無双状態で読者をドン引きさせる女なのよ。しかも私に不可能はないってぐらい何でもできるちゃうんだからね。



 ルンルンルン、ンフフー♪



「どう? 私の圧倒的な強さが分かったかしら?」

 余裕の笑みを見せ、無表情で言い放つ。ヒメちゃん、格好いい~。我ながら自分で自分を誉めたいぐらい格好いいわ。



 ルンルンルン、ンフフー♪



「くそう。この小娘(アマ)! おらを怒らせたど。こうなったら、こうなったら……」

「こうなったら何なのよ? フン」

 余裕しゃくしゃくの私に魔王ハンプティは指先で弧を描き

「―●―【生まれたままの姿にな~れい】―●―」

 と呪文を唱えた刹那、私の制服は瞬時になくなり真っ裸にされてしまった。

 

第24話 リアルなデジャブを読む