WEB小説-石川ユーリオ

石川ユーリオのオンライン小説

伝説の勇者なりきり部の奴ら:第24話 リアルなデジャブ

 魔王ハンプティは勝ち誇ったように、

「こんな姿で戦えるかね、素っ裸でね。グヒヒ」

 と不適にわらう。いやん、めっちゃ恥ずかしい。何なのこれ、何なのよこれ。私、部屋でひとりだけだったら泣いちゃうもん。泣いちゃうもん。うん、心で私は泣いても、ここでは毅然と振舞わなければいけないわ。ヒメちゃん、ファイトー一発~♪

 

 気を取り直した私は、

「だからどうした。たかが裸になっただけだろう」

 と余裕の笑みを見せた。めっちゃやせ我慢。

「ちっ!」

 魔王ハンプティは舌打ちをする。どうやら私の余裕しゃくしゃくの表情を見て悔しがっているようね。

 私は大きく指先で弧を描く。

 

「―●―【美少女戦士のようなセーラー服が欲しいですわ】―●―」

 呪文をつぶやいたと同時に私の大好きなアニメでもある美少女戦士セーラームーンばりのセーラー服が瞬時に私が着ている状態で現れる。指先で弧を描かなくても呪文なんて簡単につぶやけるんだけど、ビジュアル的にそうした方が格好いいでしょ。ヒメちゃん、格好いい!

 

 誰か私の格好よさ誉めて~。誉めて~。魔王ハンプティは驚きを隠せない顔で、

「チートすぎるだ!」

 と絶句する。

「私がチートすぎるなんてあたり前だ。バーカ、バーカ、バーカ!」

 私はさらなるチート行為を全快させる。

「―●―【ドラゴンボール的な闘技場欲しいですわ】―●―」

 と呪文をつぶやくなり、部屋は瞬時に闘技場に変わる。

 石化したままの神宮寺たちも瞬時に闘技場に移動する。

 

 本当はさらなるチートで神宮寺たちの石化を治してやろうかと思ったけれど、純情可憐な乙女を裸にした落とし前はつけさせてもらうわ。私は極道ばりに、

「女には女の決着(けじめ)がおます。美少女戦士としてこの戦争でいり、なんとしても、あんたらおかまに譲るわけにはいきまへんのや。死ね!」

 と叫ぶなり、目にも止まらぬスピードで魔王ハンプティに近づき、殴る蹴る踏みつける。

 

 そして、

「キモい。キモい。キモい!」

 と連呼して罵倒する。

 肉体と精神的ダメージをたっぷりと味あわせる。

 魔王ハンプティはすでに涙目。

 助けを求めるようにうるんだ瞳で私を見る。

 

「参っただ。降参しますだ。助けてくんろ?」

 と泣きじゃくる。

「じゃあ、さっさと魔界に帰れ!」

 さらにとどめの足蹴り。

「痛いだよ。やめてくんろ。はい、魔界に帰りますだよ。すまなんだ」

 魔王ハンプティは背中を縮め、帰り支度をする。

 

 私は腕を組みながら余裕しゃくしゃくでいたのだが、どこからともなく、

「ヒメ先生~。ヒメ先生~。会いたいよ~。会いたいよ~」

 と聞こえてきたかと思ったら、瞬時に異次元空間に引っぱられる感触があり、風景は残像と共に消え去り、そして見えなくなった。



 気づくと天界天下一幼稚園バトルスペシャリストにいた。



 園児が私に駆け寄り思いっきり抱きついてくる。

「ヒメ先生。会いたかったでしゅ。寂しかったでしゅ」

 小柄な女の子の園児が鼻水をたらしながら泣きじゃくっている。私は最悪のシナリオが頭に浮かぶ。おそらくこの園児が呪文を使って私を天空界に呼び寄せたのだ。魔王ハンプティとの大事な決戦の最中だというのにね。

 

「そんなにヒメちゃん先生が大好きでしゅか?」

 私は園児の頭を優しく撫でる。これはまずい。本当にまずい。天界(てんかい)だけに本当にまずい展開(てんかい)だ。私は己の天使ギャグに酔いしれ噴出しそうになる。ウヒョヒョヒョヒョヒョ!

 

 って、笑っている場合じゃないでしょ。ヒメちゃんのバカ。ドジ。もうお嫁にいけないッ!

 

 一通り私自身をののしって、いつもどおりの冷静な私に戻る。がまん、がまんだ。それどころではない。急いでまた魔王ハンプティの元にいかないといけない。けれども私の圧倒的な強さにはひとつだけ弱点がある。チート能力は5しか使えない。5分後、また使えるようになるまで時間がかかるのだ。

 

 使えるようになる時間も不明で、下手をすると1年以上、使えなくなる時もあった。そういう理由もあり私は将軍を引退し幼稚園の先生になったのだ。ヒメちゃんのバカ。ドジ。もうお嫁にいけないッ!

 

 さらにもう一度、一通り私自身をののしって、いつもどおりの冷静な私に戻る。こんな展開になるのなら、一気に魔王ハンプティ討伐をしていればよかった。自分の圧倒的な強さに酔いしれてしまったと反省していると、

「ヒメ殿、どうしてここに? 地球ちきゅうにいるのでは?」

 と服がボロボロになっている天使ナターシャが近づいてきた。

 

「ちょっといろいろあって……」

 私は何事もなかったように装う。ナターシャは息を切らせながら、

天界天下一幼稚園バトルスペシャリストって、本当に凄いところですね。こんなところにいたら私殺されちゃいますよ。助けてください。もうだめです~。そういえば、もうミッションは完了したのですか?」

 のほほんとした笑顔でナターシャは質問してきた。

 

「いや、ミッションはどうやら失敗のようだ」

 あくまでも冷静を装って私は告げる。

 そして、これまでの経緯をナターシャに説明。

 

 ナターシャは羽をパタパタと飛び上がらせ、

「えー! 何だって~」

 と叫んだ。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



             

 姫野愛ひめのあいと魔王ハンプティの戦いは、天界天下一幼稚園バトルスペシャリストの園児のまさかの呼び出しにより討伐失敗。ここは石化した神宮寺マモルの意識。厳密に言えば、神宮寺マモルの夢の世界である。



 黒髪の小柄な制服姿の少女がね。今まで見たこともないとびっきりの笑顔で呼んでいてさ。もうね、はちきれんばかりのロリータフェイスなんだよ。反比例なまでの身体の作りって人間国宝に推薦したいほどでね。これまたはちきれんばかりの……うひゃ、鼻血でそうだよ。

 

 少女の名前は、ひかるちゃんって言うんだけどさ。幼馴染の隣同士、同じ高校なんだ。俺とひかるちゃんは伝説の勇者なりきり部に所属しているんだよ。間違ってもコスプレ集団ではないのであしからず。

 

 俺はひかるちゃんめがけて走りだそうとするも動けないんだけどね。代わりにひかるちゃんの飼っている犬のポチがひかるちゃんめがけて走りだしたんだよ。

「ポチー、おいでー」

 ひかるちゃんが優しい声で呼びかけるんだけどさ。目線はまっすぐ俺ではなくポチを見ているんだよ。俺の存在ガン無視ですか、そうですか。

 

 ポチとよろしくやってくれと俺はすねたんだけどね。

「ワンワンワン!」

「ポチー、早くー」

「ワンワンワン!」

「ポチー」

 何だこの犬と飼い主の心温まるやり取り! しょせん俺は蚊帳の外ですよ~。さらに俺はすねたんだけどさ。ポチは見慣れた道路をひかるちゃんめがけて4本足で走っているんだよ。

 

 4本足でね、走る。ただひたすらに走る。何だろう。このデジャブ感。俺はさっぱり分からないんだけどさ。ポチは夢中にひかるちゃんに向かって走っているんだけどね。おもむろに立ち止まるとUターンしてきたんだよ。

 

 しかもポチは俺めがけて走りだしてきたんだ。もうね、慌てた俺は逃げたくても動けないんだよ。俺はポチが苦手なんだよ。俺とポチとの関係はひかるちゃんを取り合う恋のライバルなんだ。ライバル視したポチが俺に吠えて噛みついたりしてくるんだよ。思いっきり噛みつかれたことも何度もあるんだ。

 

 ポチは俺のところにやってくると息をハァハァさせているんだけどさ。おもむろにポチは後ろ足をあげてきたんだよ。このデジャブ感の正体はね。朝の俺の夢と類似していることなんだよ。ということは、俺の顔は真っ青になる。動きたくても動けない。後ろ足をあげたポチは気持ちよさそうにおしっこをしはじめたんだ。



 つーか俺、電信柱になってるじゃん!



 電信柱の俺は逃げることもできずにね。なすがままポチのおしっこがかけられていくんだよ。あぁ、何か生温かいぞ。この感じ。まさかとは思うけどさ、この嫌な感じは……。

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁっぁっぁぁっぁぁっぁあぁぁっぁっぁぁぁ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁっぁっぁぁっぁぁっぁあぁぁっぁっぁぁぁ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁっぁっぁぁっぁぁっぁあぁぁっぁっぁぁぁ」

 

 はっと気づいたんだけどね。現実に戻された俺は魔王ハンプティに石化されていたんだよ。けれども何故か俺の石化はみるみる溶けていき動けるようになっていたんだ。俺は闘技場のようなところにいてさ。地面に新しい大陸の地図を描いていたんだよ。

 

村人「神様、これが伝説の宝の地図ですか?」

勇者マモル「そんなわけねぇーだろ! おもらしだよ」

 

 ひとりボケ突っ込みをしてもごまかせないほど俺の股間はぬれていたよ。俺は状況を把握したんだけどね。闘技場にいて母親みゆとひかるちゃんが石化されているんだよ。魔王ハンプティがいるけどさ。姫野愛ひめのあいはいないんだ。姫野愛ひめのあいはどこ行ったの? まさかおトイレ中じゃないよね? 簡単な把握完了をするとね。何かもう面倒くさくなってきたんだよ。

 

「神宮寺マモルよ、まさかまさか、石化を己の神様の力で解いたというのか!」

 なんて、魔王ハンプティは驚いた表情で俺を指差していた。

 

第25話 世界中の誰よりも大好きですを読む