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伝説の勇者なりきり部の奴ら:第26話 エピローグ

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 前略、神宮寺マモル様 お元気ですか?

 

 わたしは星川ほしかわひかるです。

 たぶん、マーくんに手紙を書くのははじめてです。

 

 あのね、マーくんはわたしのこと知ってるもんね?

 だってだってお互いに小さい頃から知り合ってるもんね。

 幼馴染だもんね。

 マーくん、今日の夕ご飯何食べるの? 

 あーぁ、お腹空いてきちゃったよ~。

 ……わたしの腹ペコ具合なんて関係ないよね。

 でもマーくんにはありがとうといいたいの。

 いつも昼食の時におかずをわたしにくれるしね。

 次回もハンバーグが希望なのだ。

 食べ物の話ばかりでわたし食いしん坊だよね。



 もしかしたら食べることが大好きなのかもしれないね。

 いや好きなんだよね。

 好き好き好き。

 食べるの大好きなの。



 わたしはお父さんとお母さんを小学3年生の頃に交通事故で亡くし、おばぁちゃんと2人暮らしになったんだけど、何かとマーくんのお母さんが、

「おかず作りすぎたのでいっしょに食べませんか?」

 と声をかけてくれて、よくマーくん家でご飯を食べるようになったよね。

 

 わたしね、今だから言うとお父さんとお母さんを交通事故で亡くして、おばぁちゃんと2人きりでご飯を食べていると寂しくて、ぽっかり穴があいたような生活をしてたんだ。

 

 いつも家族四人で食べていたのに、急にわたしとおばぁちゃん2人きりになったのが信じられなくて認めたくなくて、ある日突然、お父さんとお母さんが家に戻ってきてめでたしめでたしみたいな希望を持って暮らしていました。一生叶うことのない希望なのにね。



 マーくん、あの事故のことをおぼえていますか?



 わたしの家族が車でピクニックに行こうとした時、公園で寂しそうにしているマーくんをわたしは見つけて声をかけたよね。あの日はマーくんの誕生日だったはずなのに何で一人でいるんだろうと不思議に思ったんだ。

 

 わたしなりに心配したんだぞ。

 だってだって、わたしはマーくんに、

「わたしがマーくんのおとうさんのかわりになってあげるよ」

 と約束したから。

 

 マーくんもわたしたちの車に乗ってピクニックにいくことになったよね。

 車の中でマーくんが嬉しそうに笑いはじめる姿を見てよかったなぁと思ったの。

 だってマーくんとマーくんのお父さんが遊んでいる姿をわたしは見たことがなかったの。

 

 マーくんはどこか寂しげなところのある少年に見えたから。

 わたしは話に夢中で気づかなかったけれど、お父さんとお母さんが突然に

「「うわぁ~」」

 と大きな声で叫んだので、前を見るとトラックが突っ込んできて、わたしは瞬間的に声が出せなくなって震えてしまったけれど、とっさにマーくんがわたしの手をにぎってくれて守るように抱きしめてくれたよね。

 

 マーくんに

「わたしがマーくんのおとうさんのかわりになってあげるよ」

 と言ったのにね。わたしは震えて何もできなくてごめんね。



 マーくん? あの事故の瞬間をおぼえていますか?



 あの瞬間、わたしは見たの。

 わたしは見たの。

 マーくんからまばゆい光みたいのがでて不思議な感覚がしたの。

 そして声が聞こえたの。



 俺は死んでもいい。

 でも、ひかるちゃんだけは救いたい。

 と――



 あの声は、マーくんの声だよね?

 きっとマーくんがわたしの心の中に入ってきたんだよね?

 きっとそうだよ。

 わたしにはお見通しなんだぞ。

 

 だってマーくんの思考がわたしの頭に入ってきたのは気のせいじゃないと思うの。

 それから先の記憶はなくて、気がつくと病院のベッドにいたの。

 隣のベッドにはマーくんがいたよね。

 マーくんもわたしも全身骨折して動けない状態だったけど、マーくんはわたしに向かって

「ひかるちゃんがぶじでよかった」

 とぽつりと言うとまた意識を失った。

 

 わたしも生きていることが不思議って顔をしていたと思う。

 意識が戻って全身が痛いのを感じて、あぁ、わたし生きているんだと分かったの。

 わたしのベッドの隣にはおばぁちゃんが椅子に座っていて目に涙を浮かべていたの。

 わたしはすぐにお父さんとお母さんがどこにいるのか知りたくて

「ねぇ、おばぁちゃん。おとうさんとおかあさんは?」

 

 と聞くと、おばぁちゃんは何もいわずにただ泣いているだけだった。

「ねぇ、おとうさんとおかあさんはどこにいるの?」

 ともう一度聞くと、少し落ち着いたおばぁちゃんは声を振り絞るように

「お父さんとお母さんは天国にいってしまったよ」

 とぽつりと言ってまた泣きはじめたの。

 

「そんなの嘘だ、嘘だ~」

 わたしは何度も言ったの。

 でも、おばぁちゃんは何も言わず、ただ泣いているの。

 ただ泣いているの。

 あぁ、もう優しかったお父さんとお母さんはいないんだ、と受け止めるしかなかったの。

 

「おとうさん、おかあさん……」

 わたしは泣いて泣いて、泣きやんではまた泣いて、そんな入院生活を送りはじめたの。

 泣き虫なひかるでごめんね。

 同じ病室だったからひかるの泣き声うるさかったよね。

 夜中に思い出したように泣いてマーくん、眠れなかったよね。



 マーくん? わたしにこう言ってくれたことをおぼえていますか?



 お父さんとお母さんを亡くして元気をなくしたわたしは、口数も少なくなったよね。食事も喉が通らなくなったよね。マーくんはそんなわたしを一生懸命励まそうとしたり笑わそうとしたりしてくれたよね。

 

 お互いにずっと病室が同じで入院生活は長引いたけれど、わたしとマーくんが退院する日、マーくんはわたしにいってくれたよね

 

「今度はおれがひかるちゃんのおとうさんとおかあさんのかわりになってあげるよ」

 

 と――――

 

 わたしはマーくんのその言葉に救われたような気がしたの。

 口にだして言えなかったけれど、とても嬉しかったんだぞ。

 マーくんは、この日を境に暗くて陰のある少年から、とっても明るくて元気な少年に変っていったよね。それはいつも落ち込んで泣いてばかりいるわたしを励ますためだったんだよね?

 

 わたしに元気になってもらうためだったんだよね?

 きっとそうだよ。

 わたしにはお見通しなんだぞ。

 だってだって幼馴染だもん。

 おかげさまでわたしも少しずつ元気を取り戻すことができました。

 

 あれからわたしたちは年をとって成長していったよね。

 マーくんにしても周りの同級生にしてもどんどん大人になっていくなぁと感じるのに、わたしはこの事故があってから、ちっとも心は成長しないで昔のままだと感じるんだ。

 

 ある日ね、おばぁちゃんが仏壇に向かって泣きながら言っていたのを、こっそり目撃してしまったの。

「うちの孫娘のひかるは事故の後遺症で脳の成長が小学3年生のまま止まってしまうなんて、何て辛い仕打ちなんじゃ。おぉ、かわいそうなひかる。おぉ、かわいそうなひかるよ。うぅ、おばぁちゃんは心配じゃ。心配じゃ。あの娘を残して先に死んでいくのは心配じゃ。ひかるには幸せになってほしいのじゃ。不憫でならないのじゃ」

 

 わたしね、事故の後遺症で脳に障害があるんだって……。

 精神が小学3年生のまま止まっているみたい。

 周りがね、どんどん成長していくのに、わたしだけ時が止まったようにおいてかれるのは何故?

 そう思ってたの。ずっとそう思ってたの。



 マーくん、大人になるってどういうことですか?



 ひかるはね。ひかるはね。

 分からないの。分からないの。

 きっとひかるは一生分からないまま年をとっていくんだと思います。

 身体だけはどんどん大人になっていくのにね……。

 

 でもマーくんは、そんなわたしにいつものように接してくれるよね。

 同級生がわたしの精神が幼いとか、バカだとか、こんな問題できないとかからかってきた時、いつもマーくんはそのたんびにわたしを守ってくれた。かばってくれた。

 わたしをクラスに馴染めるようにしてくれた。

 いつもわたしのそばにいてくれた。

 

 伝説の勇者なりきり部でいつもわたしの相手をしてくれた。

 本当にマーくんはわたしのお父さんお母さんの代わりになってくれたよね。

 わたしはね、そういうマーくんの姿を知っているんだぞ。

 だって幼馴染だもんね。

 

 だってだってひかるのお父さんお母さんの代わりだもんね。

 だから本当にありがとうと言いたいの。

 ありがとね♪

 マーくん♪

 本当にありがとね♪



 ねぇマーくん、わたしたちはこれからどうなると思いますか?



 ひかるはね。

 

 ひかるはね。

 

 将来マーくんの……。

 

 きゃっ、これ以上は恥ずかしくていえないッ!

 

 追伸(P.S.)

 おばぁちゃんは無事に退院しました。

 来年のマーくんの誕生日はみんなで祝おうね。約束だよ。

 あとひかるのファーストキスの相手はポチです(笑)




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 伝説の勇者なりきり部

 

 出演

 神宮寺マモル

 星野ひかる

 姫野愛(ヒメ)

 神宮寺のぼる(父親のぼる)

 神宮寺みゆ(母親みゆ)

 神様エレナ

 天使ナターシャ

 魔王ハンプティ

 担任山田

 前田君

 恋愛の何たるかを知っている女子

 元ヤンキー運転手

 ほか

 

 以上のメンバーがお送りしました。

 

 著者・石川ユーリオ