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生命師:第3話 敵国にミュタの国が乗っ取られる可能性

「このミュタを見ろ! 北に何があるか南に何があるかドッゴスわかるか?」
 アムウは周りが山に囲まれた景色を眺めながらぽつりとつぶやいた。
「アムウ様、このドッゴスめはわかりませぬ」
「俺は今、ライデン家では大うつけと呼ばれているそうじゃ」
「…………………」
 ドッゴスは返答に困りだまるしか術がなかった。
「案ずるな、そちまでもがそう思っていたとしてもわしは怒らんじぇ、その通りだし」
 アムウはドッゴスのほっとした表情を確認し、ドッゴスは相変わらず分かりやすい男だな、と感じた。アムウは兄弟からも大うつけものだと思われている節があったが、逆にアムウにとっては好都合だった。ドッゴスと毎日のように出歩こうとも、周りは遊び回っているとしか思わないのだから。

「よし、これからもっと北の方へ行ってみよう。まだあそこには行ったことがないからな」
「まだ行ったことがありませんが、何故、アムウ様は毎日のようにミュタを動き回るのでございましょう?」
「何だろうな、やることもないからじゃねぇか」
 アムウは不適に笑うもドッゴスはアムウの真意をつかめない。ただ、不思議とアムウといっしょにいるとドッゴスは根拠がないのだが、いつか大業を果たせそうな気がする。ドッゴスは動物的な感でアムウにつかえていた。

 アムウ自身も裏表のない人間を好む傾向があり、ドッゴスのことを裏表のない真っ直ぐな男と評価していた。アムウの真意は胸の内にしまってある。自分が大うつけものだと思われ、誰しも自分に期待してない時こそ自由に動き回れるのだと。東にはロミロ帝国、西はアームス教団に囲まれ、いつミュタの国が敵国に攻められるか分からない。

 自分が重要人物じゃない時こそ、このミュタという国を隅々まで知っておくことができるだろうし、知っておくべきなのだ! いずれ地形を知りつくしていることが血となり肉となる。それに、不思議な能力を持つ村がミュタの国にあるかどうかも気になるしな。アムウとドッゴスは北の方角へ馬を走らせる。一心不乱に走らせる。

 けれどもアムウの期待する答えはでなかった。風のように北へ向かう中、アムウの思考も風のように過ぎていく。不思議な能力を持つ村がこのミュタに本当にあるのだろうか。もしかしたら飲み屋で出会った町人の村の話は嘘なのかもしれない。のんびりしてたら、どっかの訳の分からん敵国にミュタの国が乗っ取られる可能性だってある。

 乱世の時代、ゆっくりとなんてしてられない。早さがよ、大事なんだぜ。

「こりゃ、先に与太郎という奴を探した方が早そうじゃ」
 アムウはつぶやいた。